妻として女としてのレビュー・感想・評価
全4件を表示
構成がとてもよくてワクワクした
淡島千景に憧れて名前の一部を頂いたと言われる淡路恵子が出ていて、藤間紫も出ていてそれだけで興奮した。
高峰秀子と淡島千景、(二人の対決、美しさ、着物全てがかっこよい)それぞれの痛みと悔しさと我慢に心から共感した。NO!と言えない、現状維持以外は何も考えられない男を演じたら右に出る者がいないと思われる森雅之!夫としても父親としても愛人としても大学教授としても情けない男だった。情けない男が中間に居なければ、二人の賢い女性は互いの立場と心情を理解するよきパートナーになれるのではないか、とさえ思った。
おばあちゃん役の飯田蝶子がとても良かった。自分の小唄の師匠と雰囲気がとても似ていて登場するたんび、小唄を口ずさむ様子を見るたんびに笑えて仕方なかった。ああいう顔のおばあちゃんを見ると何だか安心する。
子ども達はショックを受けたろうが、前向きの強さと若さがあって希望を感じた。
妻って何?母親って何?愛人って何?女が生きてる意味って何?と、今も通じる問題をグサグサえぐって提示しながら、なぜか希望も与えてくれて、女の強さを最後には見せてくれる成瀬監督はすごいと思った。話を単純化しないことの重要性を笑いと共に映像化してくれる。こういう監督がいたこと、映画があったことに感動した。見ることができて本当に良かった。
タイトルなし
男女関係の影と戦後社会にけりをつけそこねること。
1961年。成瀬巳喜男監督。建築を教える大学教授とその妻の家庭には、大学に合格したばかりの長女と中学生の長男がいる。さらに、教授には銀座のバーを任せている妾がいる。妻と妾はお互いを意識しながらもなんとかやってきたが、ある日を境に女二人に決定的な対立が訪れ、真実が明らかになって、、、という話。
徐々に過去が明らかになっていくスリリングな構成。戦争中の男女関係がついつい戦後に尾を引いて、気づいたらもはや戦後16年。別れを決断する妾が慰謝料を求めるが、妻がはねつけることで、秘密の封印が解かれてしまう。家族団らんや女性たちの語らいの場の画面の明るさに対して、男と妾、夫と妻が語らう画面になんと影が多く陰惨なことか。
長い年月にわたる微妙な人間関係を丁寧に描く成瀬節炸裂。人物が口ずさむ流行歌、小唄、鼻歌にも複雑な陰影がある。いまだに戦争を引きずっている戦後社会の総決算(の不発)でもある。味わい深い映画。
冒頭では不穏な雰囲気をまき散らすだけの踏切と遮断機の警告音、電車の通過の場面が、映画後半では実際に子どもたちの未来を閉ざす暴力的な力となって表れる。予兆とその実現。しかも、子供たちは暴力的な踏切などなかったかのごとく、親世代のごたごたを軽々と乗り越えて、映画を見に行くのだ。
全4件を表示