「骨とエロス」ツィゴイネルワイゼン ordinalさんの映画レビュー(感想・評価)
骨とエロス
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明瞭に見えるもの、聞こえるものだけが真実ではないし、むしろ記憶として鮮烈なのは、幻想や精神世界の方かもしれない。
骨を求める性的描写が映画の場面として標準の本能的かつ健康的なものに思え、逆にこんにゃくを手でちぎってこぼしたり腐った果物をベチャベチャ口にする食に纏わる描写の方にエロティシズムが感じられた。
内田百閒は未読だが、何だか分からない唐突の声というのは惹かれるものがあるのだ。一枚の異国のレコードに対する謎から、“不明瞭”という主題がブレずに、和と洋が混ざった時代性とわからない怖さを湧き起こす日本独特の絶妙なモチーフの選択をもって、ここまでシュールな形で発想が飛ばされることに感銘を受けた。
ツィゴイネルワイゼンのアップテンポで軽快に奏でられる緻密な連符の超絶技巧と低音の大きな音符との激しい強弱の差からなる劇的な曲調、それの映像や和楽器の効果音とのミスマッチが、日常と奇妙な事象の“境界”の不気味さや幻想世界の死の薫りと狂気を引き立てているのかもしれない。
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