近頃なぜかチャールストンのレビュー・感想・評価
全3件を表示
「バカバカしくてやってられるかよ」の覚悟
岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その10
学生時代にこれを観ていたら「なんじゃこれ?」と、悪ふざけ映画にしか感じなかっただろうなと思います。もう少し引いて観る事ができるこの歳だからこそ、或いは新たな戦前の現在だからこそ楽しめた作品でした。
戦争を生き抜いた老人達が、「邪󠄂馬臺國」を称して独立を宣言すると言うお話ですが、それは井上ひさしさんの「吉里吉里人」の様な強い問題意識に根差した主張ではありません。「もう国なんて使用できないので我々は好きな事をさせて貰うので、とやかく言うな」という程度の我儘宣言なのです。そこには、先だって観た「ジャズ大名」にも通底する「バカバカしくてやってられるかよ」のケツをまくった覚悟が伺えます。客席からは何度も笑いが沸き起こりました。
作品は見るからに低予算なのですが、そこに集う俳優さん達がビッグネームの方ばかりで、そのチグハグ感が実に様になっています。特に、殿山泰司さんの何ら着飾る事のない猥雑さは本当に素晴らしかったです。現在それに相当する様な俳優さんは見当たらないし、存在も難しいのではないでしょうか。
そして、本シリーズのもう一つのお楽しみゲスト・トーク。今回は本作の脚本も担当された利重剛さんでした。映画界に導いて下さった岡本監督への敬意が溢れながら、脚本・撮影・編集を通じたお話が面白くて面白くて大笑いしている内にたちまち時間となりました。
岡本喜八監督作品が好きだ、全部観てみたいという人なら楽しめると思います で、なければ意味不明になりかねません
チャールストンは、1920年代のアメリカで一世を風靡したダンスで、そのピアノとフィドルで主に演奏される音楽にも独特の特徴があります
まあ、御陽気で御気楽な調子の喜劇に相応しい音楽です
劇中、「私達チャールストンの世代は」と総理がいいます
岡本喜八監督は1924年生まれですから、本作の閣僚達が監督の父親に当たる世代です
つまり戦後36年、1981年とは、その世代の人々がいよいよ去っていく、そういう時代に入ったということです
近頃なぜか、岡本喜八監督がその世代の人々のことや、今の世代のことなど、色々考えることを、父親世代のチャールストンの音楽にのせて喜劇でまとめてみました
それが本作と言うわけです
特段のメッセージとかテーマとかそんなものはないです
ただ、取り留めも無く浮かんでくる様々な思いを楽しくご覧下さいといった内容です
岡本喜八監督のご自宅がロケセット代わりに使用されています
終盤のバスの座席にもたれて「眠る」陸軍大臣の姿
石井隆監督のGONINで似たシーンがラストにあります
本作のオマージュだったのかも知れません
ラストシーンは高速道路が山から平野に向かって延々と伸びていく光景です
沢山の車が次々に過ぎ去って行きます
まだまだまだこの先の道は長いなあ
そんな声が聞こえるようです
岡本喜八監督作品が好きだ、全部観てみたいという人なら楽しめると思います
で、なければ意味不明になってしまうかもしれません
喜劇舞台のような演技についていけない
2015/09/19、DVDで鑑賞。
戦中戦後の日本への風刺という着眼点はいいのですが、どうも安っぽい喜劇舞台のような演技についていけなかった。なんでモノクロにしているのかもわからないし。
主人公の次郎が最初は善悪の区別もつかない何をするかわからない不良青年として出てきたのに、まさかの童貞で途中からお人好しのキャラに変貌してしまっている。
物語が荒唐無稽で面白いのだから、演技は真面目にしたほうがおかしさがでたんじゃないか?
全3件を表示