「探偵ラブストーリー」探偵物語(1983) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
探偵ラブストーリー
松田優作で『探偵物語』と言うとあのTVドラマの劇場版かと思うが、全くの別物。
あちらはオリジナル企画に対し、こちらは赤川次郎の小説の映画化。
あちらは松田優作のキャラクター性を活かしたハードボイルド探偵モノだが、こちらは薬師丸ひろ子主演のアイドル映画。
一週間後に渡米を控えたお嬢様の女子大生、直美。
憧れの先輩から誘われ、ペンダントを買って貰い、海の見えるホテルへ。
そこへ突然、“おじさん”が。
しかしこの男、おじさんではない。名は、辻山。とある人物から直美の身辺警護を依頼された探偵であった…。
先輩とのいいムードをぶち壊されて、プンプンプンプン!
四六時中付いてきて、プンプンプンプン!
いい加減にして!
でも好奇心の塊のお嬢様、ちょっとこのナイーブな大人の男性に面白興味抱き始める。
前半は青春コメディ。
辻山はバツイチ。
元妻・幸子は今ヤクザの愛人で、ある日そのヤクザがラブホテルのシャワー室で刺殺された。完全なる密室。容疑は、幸子に…。
辻山に助けを求める幸子。辻山の家もヤクザたちに嗅ぎ付けられ、一旦直美の邸宅に身を隠す。
直美は辻山に、自分たちで犯人探しを提案する…。
一応、“探偵物語”。
お嬢様探偵の大活躍!…大活躍なのか??
ご都合主義の推理力とツッコミ所の行動力で、事件を解決に導く。
序盤の思わぬアイテムやフェードアウトしたと思った人物が…というそれなりの伏線もあるが、探偵ミステリーとしては超ユルい。いや、作品そのものも超ユルい。
そう思って見るもの。
薬師丸ひろ子の魅力満載。
小生意気で、好奇心旺盛で、いつしか想いを秘めて…。
彼女のPVとして見れば、これ以上ナシ!
松田優作も新たな一面。
ハードボイルドやワルやワイルドが似合う彼が、ちょっと頼り無さげな平凡な探偵。
直美に手を焼き、ヤクザに及び腰。
でも、何だかこれまでで最も愛着を感じる。
正直、ここまではちと締まりの無い出来…。
が、本作はラストが見事、締め括った。
事件も解決し、旅立つ前夜、直美は辻山の家を訪れる。
噛み合わない二人の会話…。
別れ際、直美は想いを告げる…。
翌朝の空港。
飛行機に乗る直前、辻山が現れる。
歳の差、身長差を越えた熱いキス。
冴え渡った根岸吉太郎監督のドラマチックな演出。
映画は作品全て秀逸でなくとも、あるワンシーンが素晴らしければ、名作に成りうる事もある。
本作もその一つと言えよう。
前半コメディから中盤ユルい探偵ミステリーから、ラストはドラマチックなラブストーリーへ。
そして少女は大人になっていくーーー。