「純愛の骨頂を描いた映画」探偵物語(1983) Summer Pansyさんの映画レビュー(感想・評価)
純愛の骨頂を描いた映画
バブル到来間近の自由恋愛華やかかりし日本。愛欲に乱れた大人の世界と、未だこちら側にいる少女(?)の世界との対比が鮮やかに描かれた。
2つの世界の橋渡しをするのが「松田優作」というキャスティングが素晴らしい。
少女への眼差しが優しく、そして強さを感じさせるのは、かつてハードボイルドで鳴らした彼独特の持ち味故だろう。それはラスト、自分の2周りも3周りも小柄な少女の体に思いの丈をぶつけ、あれ程までに抱きしめた両腕にも表れている。
言葉にできないあまりの愛おしさ。この瞬間の直後は別離しかないという切なさ。そんなどうしようもうない男の感情を見事に表現したシーンだった。
一方で薬師丸ひろ子の演技力にも目をむいた。
お転婆娘の屈託のなさをありのままに演じているかと思えば、日本を発つ前夜、辻山のアパートで繰り広げた、告白につながる緊張感の絶頂。(無意識のうちに前のめりになって画面に見入ってしまった)
裏切りあり、殺人あり、笑いあり。
サスペンスとも言われ、ラブコメディとも言われる当作品だが、結局何をテーマにした映画だった?と問われれば、間違いなく「純愛」と答えることにしたい。
どんな時代、それに、辻山のような酸いも甘いも味わった人間にさえ、純愛は宿ることに希望を感じた作品だった。
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