「ディープキスの後のエンドロールこそが見ものだと思います」探偵物語(1983) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ディープキスの後のエンドロールこそが見ものだと思います
所詮アイドル映画でしょ、というのは簡単です
終盤の結構な長回しは圧巻でした
薬師丸ひろ子は正直絶世の美人でもないし、スタイルが特段に良くもないし、肉感的でエロチックでもないです
小柄だけれども、折れそうなほど細いわけでもない
どこにでもいる健康的なお嬢さん
でもスレていない
芸能界の空気をまとっていない
それを透明感というのでしょうか
シーンによっては小学生高学年の子供のようにも見えます
それは得難い素材なのだと素直に思います
松田優作は家族ゲームでの怪演と同年の出演です
凡庸な演技で観るところのないもののようにも思えます
しかし、それが彼の目指した本作の演技方針だったかも知れません
過剰な演技はまるでなく、主張するのではなく淡々と自然に演じていく、それがどこまで自分にできるのか試しているのだと思います
エンドロールはヒロインとの成田空港での別れです
出発口へエスカレーターを彼女が降りていってから、延々とエスカレーターとロビーを広い画角で写し続けます
その画面右端に松田優作が小さく映ったままです
彼は演技するともなくただ佇んでいるだけです
その前の長いディープキスの余韻に浸っているのです
この演技とも言えないような名演技こそが本作における彼に取っても、観客にとっても最大の収穫であったのかもしれません
大ヒットした主題歌も大滝詠一、松本隆によるもので素晴らしい
発売は1983年4月、映画の公開は7月
ふた昔前の銀座の恋の物語などの歌謡映画の系譜に連なる作品なのかも知れません
コメントする