「原作レイプ!丹下左膳の最高傑作」丹下左膳余話 百万両の壺 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
原作レイプ!丹下左膳の最高傑作
1935年(昭和10年)の作品
白黒だし制作されたのがかなり昔だから原盤の保存状態は決して良くない
だいぶ前に地元のブックオフで安く購入したDVDで鑑賞
それ以来毎年必ず一回は観ている傑作
丹下左膳といえば大友柳太朗が1番と思っていたがこれを観て大河内傳次郎も良いよねと思えてくる
だがこれは本来の丹下左膳ではない
肝心の大岡越前が出てこないし乾雲坤竜はどうしたって話
敵も味方もバッタバッタと斬り殺す凶暴でニヒルなダークヒーローが本当の丹下左膳
しかしこれでは人情喜劇これではホームコメディー
ほのぼのとしたこの作品を観た原作者の林不忘は全くの別物に大激怒で日活に抗議
冒頭のスタッフキャスト紹介に原作者の名前はなくタイトルも餘話と付け加えられている
映画comでは丹下左膳映画の最古になっているがその歴史は古く無声映画時代からの定番
これ以前に伊藤大輔監督やマキノ雅弘監督などがメガホンとってきたチャンバラ映画の人気作だがその殆どが資料はあっても肝心のフィルムが現存していないんだろう
タイムマシーンにお願いしたい
昔の映画はエンドロールがなく本編の初めに短めに済ませるのが良い
中国の野戦病院で赤痢により28歳の若さで亡くなった天才山中貞雄監督の代表作
彼の監督作品は殆どが失われこれを含め3作品しか残っていない
ユーモアとテンポが素晴らしい
本来ならリズミカルでまるで音楽のような映画だがところどころ欠落しているようでそれが残念だ
特にやくざもんの兄貴の仇とりにやってきたチンピラどもとのチャンバラがない
元々ないのか欠落しているのかわからないが物足りない
用心棒の丹下左膳と矢場の女将のやりとりが面白い
言っていることとその後の行動が違う
特に女将の医者と竹馬の件が1番好き
丹下左膳役は剣劇の大スター大河内傳次郎だが女将役は九州から上京してきた芸者喜代三であり本来は役者ではないがいい味出している
柳生藩主の弟でお婿さんの道場主役は沢村国太郎
妹は大女優沢村貞子で弟は黒澤映画でもお馴染みの加東大介
長門裕之津川雅彦の父親
長門裕之にそっくりだ
比較的恵まれた環境ながら立場の弱い悲哀な男を好演していて面白い
あと脇役の屑屋コンビの背の高い方
高勢実乗のパンチの効いた変な顔が衝撃的である
顔だけなら知性が全く感じられないが男らしく強引に笑いを取りにいっている姿が清々しい