「阿羅羯磨(アラカツマ)、憤怒の進撃!」大魔神 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
阿羅羯磨(アラカツマ)、憤怒の進撃!
大魔神シリーズ第1作。
Amazon Prime Video(シネマコレクション by KADOKAWA)で鑑賞。
ガメラ・シリーズと双璧を成す、大映特撮映画の看板シリーズが本作をもって誕生した。時代劇と特撮の融合により、大人の鑑賞にも耐え得る良作である。ストーリーはシンプルな勧善懲悪で、誰が観ても入り込み易いのがこれまた良い。
大魔神出現の要因は、恨み、呪い、復讐の末である。大映らしさ全開のおどろおどろしさが伊福部昭の劇伴と相まって、他の特撮作品には無い存在感を醸し出していると感じる。
怪獣映画と言えば平均的に2、3回、怪獣の出現シーンが挿入されるのが定番であるが、本作ではクライマックスを迎えるまで大魔神阿羅羯磨(アラカツマ)は姿を見せない。
耐えて耐えて耐え抜いて、最後の最後に全てに報い、溜飲の下がるカタルシスが待ち受けているのである。忠臣蔵しかり、こう云うのが嫌いな日本人はいないのではないかと思う。
埴輪みたいな顔をした石像が願いを受けて動き出し、柔和な表情が憤怒の形相に変化した瞬間は、カラダがゾクゾクッと震え上がるほどに、恐ろしくて印象深いシーンだと感じた。
時代劇となると、セットや衣装に金が掛かる。ましてや、特撮もあるからそこにも金が掛かる。ケチるととんでもない低クォリティーの作品になってしまうが、本作はどちらも全く妥協無しの本格派で、とても素晴らしい出来映えであると思う。
大魔神はゴジラやガメラに比べると身長が低いため、ミニチュアを使った特撮だけではなく、実物大の模型を使った大規模なシーンをつくることが出来ると云う特色があった。
サイズが小さい分、とてつもないリアリティーがある。逃げ惑う人々のシーンが合成ではなく、本物であるが故に放たれる凄まじい迫力はこのシリーズだけのものだなと思った。
[余談]
当時「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」と同時上映だった。パイオニアの東宝ですら不可能だった特撮映画二本立てを興行した大映。東西に撮影所を持っていたからこその芸当だろう。
[以降の鑑賞記録]
2022/03/12:Blu-ray(4K修復版)
2025/03/20:Blu-ray(4K修復版)
※修正(2025/03/20)