劇場公開日 1966年4月17日

「日本特撮だけでなく日本映画の宝です」大魔神 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本特撮だけでなく日本映画の宝です

2020年2月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

1966年4月公開
大怪獣決闘 ガメラ対バルゴンの併映作品
ガメラが東京撮影所に対して本作は京都撮影所の作品です

日本の特撮映像の金字塔にして、日本映画オールタイムベストのリストに入る名作です

日本の特撮とは何か?
大映にしか撮れない特撮とは何か?
それを真面目に研究して正しい答えを出しています

大映、それも京都撮影所が特撮をやるなら、それは時代劇に題材を取るのは当然です
破壊シーンは当然日本家屋なり日本の城郭になる
ならば、溝口監督作品の精緻を極めた美術セットを作る技術や職人達
時代劇なら存分にいくらでも迫真の演技を見せることのできる俳優達
その衣装、小道具
全て他社に勝りこそすれ劣る所は何一つない
そして時代劇の大ヒット映画を何本も撮って来た監督、カメラマンがいるのです
それが監督の安田公義、撮影の森田富士郎です

美術の内藤昭は、大映時代の溝口健二監督の美術監督であった水谷浩の弟子
美術に特に尋常でないほど厳しい溝口監督に鍛えられた人です
溝口監督の近松物語や新・平家物語の美術助手をした人といえば凄さが伝わると思います
その後も最盛期の大映京都撮影所の美術を切り盛りしてきた人物なのです

これらの一流どころが特撮映画に取り組んだわけですから、素晴らしい作品が出来上がったのは当然かもしれません

しかも音楽には東宝特撮で有名になった伊福部昭です
彼の日本の土俗的な感覚を取り入れた音楽は、本作に実にマッチしています

チェコのゴーレム神話を日本の戦国時代の物語に見事に翻案した脚本
結末に土塊に変わり崩れさるシーンにはしびれました
魔神の埴輪をモチーフにした石像
憤怒の顔にかわる超有名シーンのインパクト!
その顔面デザインは仁王像をモチーフにしており更に青銅の肌をした色彩なのです!
そしてスーツアクターの目力!

黒澤明監督の砦のオープンセットを思わせるような砦の工事現場シーン
お城の破壊シーンも、土埃をあげて崩れる瓦の大屋根、板壁や土壁や太い梁が割れ裂け崩れるその様の迫真さ、リアリティさ!
東宝特撮にはできない、大映京都撮影所だけが撮ることの出来る映像なのです
見事な独自性とクオリティを達成して見せているのです

日本特撮だけでなく日本映画の宝です

あき240