「繊細な男による暴力描写」その男、凶暴につき shinさんの映画レビュー(感想・評価)
繊細な男による暴力描写
「ソナチネ」も「HANA-BI」も「アウトレイジ」もこの映画がなかったら生まれていなかった。北野武映画の原点である。ただ歩いているだけで、走っているだけで、黙っているだけで、これだけ絵になる男は他にいない。会話を終えた後の一瞬の沈黙。この「間」と役者の表情で語らせる。観客にそれぞれの役者の心境、心情を想像させる。もはやアートである。
暴力描写がこれほど美しく恐ろしく描かれている映画を他に知らない。銃撃戦はどこか「タクシードライバー」を想起させるが、他の映画と比べてはいけない唯一無二の映画なのだ。
本作は急遽代役として監督を務めたらしいが、北野武がこの映画を撮るのは必然だったと思わせる。世界のキタノへの出発点であり、邦画史に残る名作である。
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