劇場公開日 2018年7月28日

「ぼくらの少女幻想」1999年の夏休み 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ぼくらの少女幻想

2021年9月16日
iPhoneアプリから投稿

男4人を女4人が演じる倒錯劇。女優たちは撮影に際して本当に髪を切られたんだろうか…と思うと少しかわいそうな気も。

耽美的と形容してしまうにはあまりにも若く脆く清冽な少年たちが剥き出しの刃で互いを傷つけ合う様子を画面の外から俯瞰しているうちに、なんだか見てはいけないものを見ているかのような居心地の悪さに苛まれた。

このような「子供たちがある種の極限的/閉鎖的シチュエーションに置かれる」系の物語では、普通であれば『蝿の王』や『バトルロワイヤル』のような泥沼の暴力を招来する結果になることが多いが、本作はどのような急転直下が起きようと穏やかなトーンを守り続けていたのが逆に怖かった。

顕在的な暴力は殴るとか蹴るとかいった実際の暴力行為に対する恐れが先行するが、潜在的な暴力はそういった表層的な些事をすり抜けて心臓のど真ん中にダイレクトで突き刺さってくる。本作は後者の暴力が常にピアノ線みたいに張り巡らされており、我々は登場人物たちの何気ない(また終始演劇的で、逸脱のない)言動の節々にも緊張を強いられることになる。

とはいえ緊張感と透明感を増す外連味として女優が起用されていることに「少女」なるものへの金子修介の(ひいては我々男の)過大な期待もとい幻想を感じないでもない。

男と男の恋愛が特に何の疑問も解決もなく進行していくという当時にしては画期的なジェンダーレスの素地がせっかくあったというのに、ちょっともったいないなと思った。

因果