ゼロ・ファイター 大空戦のレビュー・感想・評価
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空の独立愚連隊西へ
加山雄三が隊長で、佐藤充はじめ個性派揃いの部下達の破天荒な痛快戦争アクションといえば? もちろん「独立愚連隊西へ」ですよね 本作は、その痛快戦争アクションを南洋に展開する海軍航空隊に物語の舞台を移したものと言ってよいものです これはもう森谷司郎監督、狙ってやってます 絶対確信犯です 岡本喜八監督の「独立愚連隊西へ」は1960年の公開 本作は1966年公開です 加山雄三はその「独立愚連隊西へ」が初主演でした メガヒットになった「君といつまでも」が主題歌の「エレキの若大将」は1965年12月の公開です 本作は1966年7月の公開ですから、その間にもう1本「アルプスの若大将」が1966年5月にあります これまたメガヒットの「お嫁においで」のレコード発売は1966年6月、これを映画化した同名映画は同年11月でした つまり加山雄三の人気の最絶頂期にあった頃の作品という訳です その割に、本作の彼の役も物語も若干暗めです 痛快戦争アクションとはいえず、割合とシリアスです 谷幹一演じる整備班長が、ガラクタででっち上げたマンドリンのようなギターを弾いたり歌ったりするシーンもありますが、本作での加山雄三はにやけた二枚目ではなく、真面目で頭の切れ腕の立つ戦闘機パイロットです 無意味な攻撃は損害をだすだけだと上層部を批判しますが、決して臆病者ではないのです その正体は後半明らかになります ただの戦争アクションに止まらずに、戦時中の軍の在り方の批判が色濃く主張されています とは言え戦争アクションの面白さは失われていません 実物大の零戦が数機登場して、野外セットをプロペラを回して滑走路を進むシーンは素晴らしいクォリティーです 特撮での飛行シーンもクォリティーが高く迫力があります そして本編と特撮シーンが見事につなぎ合わさっているのが見所でしょう 森谷司郎監督が特技監督の円谷英二監督とのコミュニケーションを綿密にとった成果だと思います 物語は山本五十六長官の撃墜シーンから始まります つまり戦争の時系列でいえば、今公開中のエメリッヒ監督版「ミッドウェイ」が終わった後の展開というような内容です お話も米軍に暗号が破られて筒抜けになっているというところから始まります 合わせてご覧になればその余韻をもっと楽しめると思います 本作では無線で僚機が互いに通話を自由に行っていますが、史実では零戦の無線は全く使い物にならなかったそうです それに対して米軍機の無線は良く機能して、編隊が僚機が共同して戦えたので、結果的に1対多数での戦いになり零戦を圧倒していったのです
零戦愚連隊散りゆく…
東宝戦争映画で初めて零戦を題材にした1966年の作品。 生涯大空に憧れ続けた円谷英二。 特撮とミニチュアを駆使し、迫力の零戦と米軍機の空中戦など、その憧れをたっぷりと活写している。 後に『日本沈没』を手掛け、東宝特撮とも関わり深い森谷司郎監督のデビュー作。 森谷監督の作品と言うと『日本沈没』や『八甲田山』など、黒澤明の愛弟子だけあって重厚な大作のイメージだが、本作は娯楽性のある始まり。 これも娯楽映画の職人脚本家・関沢新一と佐藤勝の明朗な音楽の味付けか。 戦死した前隊長の代わりに着任した新隊長と荒くれ者のメンバー。 演者にかけて言うならば、“零戦の若大将”か“零戦愚連隊”。 後半はなかなかシリアスに見応えあるドラマになっていく。 上層部の非情さ、戦争の無情。 あんなに意気高揚だった隊員たちが一人また一人と命を落としていく。 無音で海上に墜落していく最後と生き残った者の台詞は胸に迫るものがあった。
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