「砂の器の原形です」ゼロの焦点(1961) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
砂の器の原形です
松本清張ものなら砂の器と本作を観ていなければ話になりません
久我美子 30歳
高千穂ひづる 31歳
有馬稲子 29歳
この3人で物語は展開します
終戦は中学卒業の年頃、戦後の混乱期に十代を過ごした女性達です
それがゼロです
そこに焦点があてられた時に本作の物語が始まります
とにかく久我美子が美しい!
153cm の小柄、少女のような骨格
小さな顔、知的な広い額、強い意志の眉、形のいい瞼と大きな目、頬骨から小さな顎にかけてのライン
しかし30歳、大人の女性としての落ち着きがあります
田中絹代の現代版と言うべき、芯の強さ、聡明さ、淑やかさを兼ね備えています
それが後半の説得力をもたらしているのです
役の禎子は26歳ですが、それを30歳の久我美子に配役していることが大成功しています
その彼女が中盤まで出突っ張りです
その美貌を曇らせて、雪の金沢や能登半島を寒げにスカーフを頭に被り、肩をすぼめて歩きまわる姿
それだけで中盤まで目を離せない磁力を発しています
能登の漁村で写真の家を見つけたときの、総毛立つ表情の演技と続く演出、カメラのズームはこちらまで総毛立ちました
終盤は高千穂ひづるがメインとなり、謎解きのパートを牽引します
彼女の大きな目がさらに大きく見開かれ、細い眉がつり上がるカットは見事です
有馬稲子は脇役に過ぎませんが、高千穂ひづるを引き立てる役として良い仕事をしています
終盤の謎解きの舞台は断崖絶壁です
2時間ドラマのこのシーンは本作にルーツがあります
金沢
劇中は夜汽車で行く、遠い遠い北国の街です
それが今では東京から僅か2時間半!
昨年季節の良い頃に乗ってあまりの速さに仰天しました
金沢駅もまた近代的に産まれ変わっていて、街中も大きく都会に変貌しておりこれまた仰天しました
それでもちょっと繁華街を外れると中心部からすぐ近くなのに京都よりも日本情緒溢れる街並みがまだまだ残されていました
この金沢と能登半島の旅情、画面の迫力が本作を名作たらしめているもう一人の主演俳優だと思います
それを芥川也寸志の素晴らしい音楽が盛り上げてくれます
監督は野村芳太郎
脚本は橋本忍です
原作は松本清張
音楽は芥川也寸志
遠い地方の光景
この布陣何か思い出しません?
そう、本作は砂の器の原形とも言うべき映画なのです
砂の器には本作との相似形をいくつも感じ取れるはずです
砂の器のゼロの焦点が本作なのです