「芸達者たちの競演」瀬戸はよいとこ花嫁観光船 たーちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
芸達者たちの競演
本作は、まだ本州と四国の間に橋が架かっていなかった頃のお話です。当時は連絡船が行き来しており、宇野駅と高松駅を結ぶ宇高連絡船が運航していました。現在では、明石海峡大橋、瀬戸大橋、瀬戸内しまなみ海道という三つの橋が本州と四国をつなぎ、船での移動は少なくなっています。
そんな時代を背景にした、ご当地コメディ作品です。まず注目すべきは、芸達者たちによる見事な競演です。
大作(フランキー堺)と浪江(朝丘雪路)が演じる元漫才師の夫婦役は、息の合った掛け合いが印象的でした。朝丘さんがこれほど丁々発止の漫才をこなせるとは思っておらず、驚きました。フランキー堺さんの喜劇映画での芸達者ぶりは以前から存じていましたが、朝丘さんはそのフランキーさんを相手に一歩も引かず、見事な合いの手を披露しており、素晴らしい演技力だと感じました。
また、普段は下ネタの多い山城新伍さんも、今回は真面目な塾の先生役で登場します。最初は二枚目かと思わせておいて、実はストリップ好きというキャラクターで、いつものエッチな雰囲気で笑わせてくれました。
そして何と言っても、二郎役の財津一郎さんが印象的です。元々は吉本新喜劇で活躍されていた方なので、当時はコメディ俳優というイメージが強かったのではないでしょうか。兄役のフランキーさんとのやり取りも面白かったですが、奥さんの浜子役を演じた日色ともゑさんとの、真面目ながらもどこかユーモラスな掛け合いが抜群でした。日色さんも非常に演技が上手だと感じました。
結局、大作も二郎も、奥さんがいなければ生活が成り立たず、生きがいも感じられないのです。一方で、浪江も浜子も、夫こそが自分にとって一番の存在だと感じている様子が描かれており、微笑ましく鑑賞することができました。
男三人が二郎の家に集まる展開は、やや出来過ぎな印象もありますが、芸達者な俳優陣の芝居によって、自然に受け入れることができました。
ラストでは、宿泊先のない奥さん三人が二郎の船に乗り込み、そこへ台風が急接近します。夫たちが救出に向かい、ハッピーエンドを迎えるという展開も、ややご都合主義ではありますが、作品の雰囲気には合っており、納得できる結末でした。
また、大作と浪江の娘役として村地弘美さんが出演していたり、その恋人役に夏夕介さんが登場していたり、山城新伍さん演じる新一を好きな女性役として田坂都さんが出演していたりと、かつての青春ドラマでよく見かけた懐かしい顔ぶれが揃っており、非常に懐かしく鑑賞することができました。