「大人の世界を覗いた少女のカ・イ・カ・ン」セーラー服と機関銃 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
大人の世界を覗いた少女のカ・イ・カ・ン
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DVD(デジタル・リマスター版)で3回目の鑑賞。
原作は読了済み。
赤川次郎原作ならではのユーモア要素を極力排除し、星泉が遭遇する出来事を時に爽やかに、時に残酷な生々しさで描き出す。血生臭い抗争の渦中で奮闘する泉に惚れ惚れした。
薬師丸ひろ子の魅力が炸裂している。泉の少女から大人の女への脱皮を、様々な表情を見せながら繊細に演じていた。
渡瀬恒彦演じる佐久間との、疑似父娘のようであり恋人でもあるような関係に揺れる思春期の心の揺れも感じさせる。
相米慎二監督の妥協を許さぬ演出が登場人物たちの心情を詳らかにするのだ。実際撮影現場に漂っていただろうハンパ無い緊張感も画面から伝わり、こちらまで緊張してしまう。
連発されるワンカットの長回し。アイドル映画らしからぬロングショット。実験精神に満ちたアート系映画と言っても過言じゃないと思う。角川映画としては異質な作品だろう。
あまりにも有名なクライマックスも最高だった。泉がヘロインの瓶に向かって機関銃(実際は軽機関銃)をぶっ放し、放心状態の中で恍惚と呟く名ゼリフ―「カ・イ・カ・ン…」。
漂うエロさにゾクッとした。飴ガラスの破片が薬師丸ひろ子の頬を直撃して出血すると云うハプニングがありながらも、カメラを止めなかったことで生まれた屈指の名場面である。
大人の世界の醜いエゴや理不尽を、大人の階段を登り始めたばかりの少女が迸る衝動のままにぶち壊し、去っていく。
しかしそこにあるのは爽快感だけではない。寧ろ虚しさの方が勝つ。この世界に自分もいずれは身を投じてしまうから…
[以降の鑑賞記録]
2021/12/30:4K修復版(BSテレ東)
※修正(2025/04/13)
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