「「狼」に、なりきれなかった作家…」人狼 JIN-ROH 777さんの映画レビュー(感想・評価)
「狼」に、なりきれなかった作家…
「ケルベルス・シリーズ」で、実写ではなくアニメになったのは
様々な事情があっての事であろう。
前2作の主役「都々目紅一」や「乾」は、全く登場せず
オリジナルキャラ「伏一貴」が主人公である。
冒頭に、メインヒロインと思われた「赤服の少女」が、自爆テロで
死亡… その親族と思われる「赤ずきん少女」と「伏一貴」の物語。
スタッフのオリジナルメンバーは、プロテクトやエンブレムのデザイン、
出渕裕・高田明美しか残っておらず、脚本の伊藤和典や
音楽の川井憲次すら不参加… 2000年代に向けて押井氏が
世代交代を図ったと見られる。
これまでの作品で登場した「ミステリアスな少女」… その最後を
飾るが、この作品の「赤ずきん少女」である。
(『地獄の番犬』では、ヒロインは本編で赤服を着ていないが、
パンフレットに赤服を着ている写真あり)
結論から言えば、ラストに主人公は「赤ずきん少女」を殺す。
何故そうなったかは予想だが、押井氏が「これ以上、ケルベルスを
続けたくない」との思いで「ミステリアス少女」を葬って、ピリオドを
打ったのではないのか?
続けられない理由の一つ目は、21世紀に向かって日本で市民が
暴動を起こして、武装警察が銃撃で殺す「近未来」に、もはや
リアリティが無くなった事実。
二つ目は、押井氏が「少女好き作品」を、終わらせたかったかも?
「うる星やつら」を長く続けられたのは、押井氏自身が「ラム」を
好きであったから。
しかしながら、年齢的に「少女好きで作品を作る」に限界を
感じて「少女を殺した」のであろう…
「狼」は、好意を持つ肉体を「殺して喰らう」が、人間である自分は
それができないと察して、押井氏は自分とは違う「人狼」の
主人公エピソードを持って『完結』…
よって、押井氏の後の作品は「少女好き」の部分が少ないのでは
ないのだろうか…?