新宿アウトロー ぶっ飛ばせのレビュー・感想・評価
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乱高下するヘリコプター
『八月の濡れた砂』の藤田敏八が手がけたアウトロー映画。将来安泰のボンボン息子が実家と縁を切って無頼生活に勤しむ、という筋立てはボブ・ラファエルソン『ファイブ・イージー・ピーセズ』を想起させるが、おそらく制作時期はほぼ同時。ニューシネマ的な問題意識がいかにグローバルに共有されていたかが伺える。
まず冒頭がいい。刑務所を出た渡哲也がタクシーで新宿に向かう。しかし獄中にいた数年間のうちにすっかり様変わりした新宿(このあたりが本格的に開発され始めたのは60年代末期〜70年代にかけてのこと)の摩天楼を一瞥すると、「やっぱり横浜だ」と進路を変更する。開幕早々のヒリついた疾走感に陶酔する。
渡哲也になぜか付きまとう原田芳雄は都内に巨大な邸宅を構える良家の子息。原田はブルジョアというスティグマを抱えた自分に対するコンプレックスからか、根っからの無頼気質な渡に強く惹かれるが、それを察されないようあくまで対等なフリで彼に接そうとする。なんともブルジョア仕草的だ。愚連隊に拉致された妹(もちろんカタギ)を救い出した時にも、泣きじゃくる妹を引っ叩くさまを愚連隊に見せつける。俺はお前らみたいな半グレとは違うんだぞ、という必死の自己証明のようだ。他方渡はといえばいきりたつ愚連隊の面々にも余裕綽々の態度。
どだい命を顧みない渡と、アメリカン・ニューシネマのような屈折した感傷に浸りたがる原田が共に死の匂いが漂うほうへと向かっていくのは必然だが、その結末は滑稽だ。思わず死に損なってしまった命、思わず手にしてしまった大金。団地の上空をゆらゆらと乱高下するヘリコプターが彼ら(いや、たぶんそう思っているのは原田だけだろう)のやりきれない気持ちを代弁する。
「冒険者たち」の影響を強く感じる日活ニューアクションの傑作
フランス映画の名作「冒険者たち」(1967年)の影響下をとても強く感じる日活後期のニューアクション。
フランソワ・ド・ルーペやミシェル・ルグラン風の音楽に始まり、渡哲也と原田芳雄と梶芽衣子の三角関係、そして女が巻き込まれて、二人に寄る儀式の様な葬い。
原田芳雄はルガーP-08拳銃を持ち、要塞化したビルで死闘を演じる。ヘリの操縦や空撮などもところどころに「冒険者たち」を連想させる場面も。
ウイスキーをがぶ飲みして、暴力振るう事に躊躇は無いが、意外と陰りなく軽快さを感じる哲兄さんと若干三枚目で陽性な原田芳雄とのバディ感は、結構面白い。シリーズ化出来なかったのかな。
一番の強敵の成田三樹夫の鋭いキレのある演技と着物姿も素敵な梶芽衣子姉さんも見どころ。
小僧な沖雅也も新鮮。彼の搭乗するホンダドリームCB750FOURが、場面によって車種が変わるのは、ご愛嬌。
監督の藤田敏八は、監督後期のべたついた重い演出のイメージがあり敬遠していたが、意外と職人的なテンポ良く刻む演出で、明朗さもあり活劇としては上出来な作品だと思う。
渡哲也&原田芳雄!
渡哲也主演の1970年の日活作品。
“死神”と呼ばれた若いヤクザの勇次。仮釈放された彼を待っていたのは、麻薬密売人の直。二人は手を組んで、ヤクザ組織から奪われた直の麻薬を強奪する。
日活後期のニューアクション。
この時期になってくると、かつての日活アクションの雰囲気と大分違う。
監督を藤田敏八が務めたのがミソ。まだ監督デビュー間もないが、後の作品に見られる若者のけだるい雰囲気は既に感じ取れられる。
硬派な渡哲也とダーティな原田芳雄、この二人のコンビネーションが最大の見所。
もう一度、二人の顔合わせを見たいとさえ思わせたが…今はもう叶わぬ夢なのが残念でならない。
梶芽衣子が魅惑的。
殺し屋“サソリ”に扮した成田三樹夫が凄みを見せる。
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