劇場公開日 1969年5月24日

「【斬新すぎる演出と、紙屋の治兵衛の妻おさんと、治兵衛と心中する小春を演じ分けた岩下志麻さんの凄味ある演技に魅入られる作品。ATGの映画って凄いな。】」心中天網島 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 【斬新すぎる演出と、紙屋の治兵衛の妻おさんと、治兵衛と心中する小春を演じ分けた岩下志麻さんの凄味ある演技に魅入られる作品。ATGの映画って凄いな。】

2025年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■粗筋は誰でも知っている(野かな?)と思うので割愛。

◆感想<Caution!内容に触れているかな?>

・冒頭、イキナリ人形浄瑠璃の準備のシーンが映し出される。”心中天網島”が、近松門左衛門による人形浄瑠璃から始まっているからだろうが、ビックリする。

・物語が始まると、随所で黒子が登場する。手紙を読むシーンでは、黒子が手紙を持って来るし、まるで歌舞伎である。
 その演出が実に斬新であり、且つ不自然さがないのである。
 映画を観ているのか、歌舞伎を見ているのか平面的なシーンでは一瞬分からなくなる。

・だが、黒子の姿が立体的なシーンで登場する、一番分かり易い紙屋治兵衛(中村吉右衛門)が、小春の喉を短刀で突いた後に、首を括って鳥居で自害するシーンの斜め下からのアングル。
 紙屋治兵衛を多くの黒子が抱え、鳥居に紐を投げ上げて首を括るのである。鳥居には来る雇用の梯子迄置いてあるのである。
 斬新すぎる演出である。

■”心中天網島”は、一度だけ祇園に酒を呑む前に京都四条大橋のたもとにある南座で観た事がある。当然、随分前にチケットを取るのだが、良い席はナカナカ取れない。
 故に、結構遠くから見たのだが、今作では例えば紙屋治兵衛と小春が墓場で情を交わすシーンなどは、斜め上からカメラが回り、小春の太ももが露わになる禁断のエロティックさである。これは舞台では表現できない。
 更に、私はATGの映画は年代的に、後年京都文化博物館で、入場料たった500円で午前と午後に上映される1960年代、1970年代の映画を掛けてくれる立派なホールで見ただけである。どの回も可なり年配のお客さんが入っていたものである。

<今作は、斬新すぎる演出と、紙屋の治兵衛の妻おさんと、治兵衛と心中する小春を演じ分けた岩下志麻さんの凄味ある演技に魅入られる作品なのである。>

NOBU
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