秦・始皇帝のレビュー・感想・評価
全2件を表示
アフター "キングダム"
大映70㎜超大作シリーズ第2弾。
Amazon Prime Video(KADOKAWAチャンネル)で鑑賞。
民の心を重んじる王、政が秦の始皇帝となり、やがて暴政を敷く暴君へと変貌する様が壮大なスケールで描かれた。
大映のオールスターが集結し、シネマスコープの画面を鮮やかに彩る。これぞ超大作と言える風格の作品だった。
中華統一達成から始まるため、戦のシーンが殆ど無かったのが物足りない。もっとアクションシーンが欲しかった。
2時間半超えだが、ストーリーは駆け足気味で人間ドラマの不足が見られた。例えば、始皇帝を一族の仇と狙う朱貴児がいつの間にか始皇帝を愛していたりと、描写不足が否めない。
だが、民を思うが故に暴走し、逆に圧政を敷いてしまう始皇帝の自己矛盾を、勝新太郎が強烈な存在間と圧巻の演技で体現していて息を呑んだ。若尾文子との問答が名場面だと思う。
言うなれば「キングダム」の後日談になるわけで、吉沢亮が年を取ると勝新太郎になるのかなどと戯れに思いながら観ていた。つまり吉沢亮が演じるエイ政もいずれは暴君になってしまうのか。今のキャラづけからは想像もつかない。だが史実では民を顧みない政策により、秦は2代で終わってしまう。どうなるのだろう。原作は読んでいないので実写映画で追いかけているが、今のペースでそこまで描き切れるのか心配である。
中国統一が早すぎ!『キングダム』はまだだというのに・・・
開始14分、あっという間に中国統一。オリジナルの200分バージョンではなく160分のものだからだろうか。やはり統一後が大切なのだな。謁見の間(?)での最初の確執が、幼き頃に政と同じく人質となっていた燕の太子丹(宇津井健)だ。そして父と一族の仇として朱貴児(山本富士子)が馬上から政を殺そうとするのだが、最初に安房宮に入る女となる。自分の出生の秘密、秦の先王の子ではなく呂不韋の子であると聞かされ、戸惑う政。中盤からは丹の命を受けた荊軻(市川)の始皇帝暗殺未遂が起こる(史実では始皇帝即位以前のことらしい)。
始皇帝が戦いに赴いて留守のあいだに、蛮族である匈奴に襲われ、朱貴児も死んでしまうのだ。これが万里の長城建設のきっかけだった。長城建設には多くの人民が犠牲となり、民衆の不満は爆発寸前。そこへ儒学者の辻説法が流行し、多くの儒学者は穴埋めにされ、焚書坑儒が行われたのだ。この焚書坑儒。紙の発明はまだまだ先のことなので、書は布か木の板であったことに今までのイメージが覆された。
孟姜女(若尾文子)と万喜良(川口浩)のエピソード。万喜良は儒学生であるがため国禁となった書を守り続ける若者だったが、たまたま孟姜女の肌を見たことから結婚することになるが、たちまち長城工事に徴用される。度々の地震のため長城工事が芳しくない場所で万喜良が人柱にされる・・・その光景を夢に見た孟姜女は夫を探す旅に出て、人柱にされた真実を聞かされ泣き崩れると、地震・雷鳴とともに長城の一部が崩れ去ってしまう。
終盤には不老不死を願って徐福(中村鴈治郎)を頼るが、単に生き延びたいという理由ではなく、自分が民のために為したことが間違ってなかったかどうか確かめたいと言うのだ。“暴君”として批判され続け、かつての仲間からも「何を考えてるのかわからない」と批判される。そして死んだと思っていた太子丹に刺されるが、太子丹は死ぬ。始皇帝もその傷がもとで間もなく絶命(だと思う)。
ちょっとした歴史お勉強には役立つ内容だが、暴君と言われるのを拒み続けたところが悪あがきとしか思えない描き方。「民の幸せのためにやっているのだ」という言葉、今の世でも為政者の吐く言葉だからな。政治家なんてそんなもんだということを言いたいのか・・・わからん。
【2011年ケーブルテレビにて】
全2件を表示