「徹底したヤクザ社会のリアリティ追求と俗物的な登場人物の面々は自分たちの身近にもいそうで親近感もあり、世界観に没入できる傑作群像劇ですね。」仁義なき戦い 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
徹底したヤクザ社会のリアリティ追求と俗物的な登場人物の面々は自分たちの身近にもいそうで親近感もあり、世界観に没入できる傑作群像劇ですね。
新文芸坐さんにて『十一人の賊軍』公開記念として『仁義なき戦い』全5部一挙上映。
夜9時から翌6時半までの一挙オールナイト上映もありましたが、知命を迎えて徹夜する体力もなく朝10時から夜8時まで劇場に籠城いたしました。
『仁義なき戦い』(1973)
実際の広島抗争当事者美能幸三組長の獄中手記を飯干晃一氏が解説を加え、映画化にあたり笠原和夫氏が脚本を書き上げたのですが、登場人物すべて実在の人物や事件をモデルにしている点が今では考えられず、徹底したヤクザ社会のリアリティ追求と俗物的な登場人物の面々は自分たちの身近にもいそうで親近感もあり、世界観に没入できる傑作群像劇ですね。
撮影も手持ちで荒々しくドキュメンタリータッチの映像は、主役のアップを丁寧に撮影する当時からすれば画期的、情緒的な無駄な長回しも全くなくてテンポ良さがずぬけてます。
ストーリーの骨子は今でいう「親ガチャ」。
広能氏(演:菅原文太氏)が山守組長(演:金子信雄氏)と盃を交わさなければ…という親殺しのテーマにしたこれは一大サーガですね。
菅原文太氏、松方弘樹氏、梅宮辰夫氏、田中邦衛氏、渡瀬恒彦氏とオールスター、芸達者な面々ばかりですが、なんといっても山守組長役の金子信雄氏と妻役の木村俊恵氏のコンビが白眉ですね。とにかく身近にもいそうな小心でずるくてセコい、スケベ、都合が悪いと噓泣きする組長が観客のヒートを買ったのが本作大成功の主因のひとつでしょうね。
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