「戦後日本の歩んだ道」仁義なき戦い 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
戦後日本の歩んだ道
ファーストカットがモノクロ写真の原爆ドーム。物語は終戦直後の広島県呉市の闇市。冒頭のこの闇市シーンから画面から、生命のエネルギーが噴出していて何回見ても釘付けになってしまう。まるでニュース映像のような荒々しい映像に、ギラギラした役者の顔が映される。
深作監督もどこかで言っていた気がするが、この作品は戦後の日本社会の実像を、裏社会からえがきだしたている点が素晴らしいのだと思う。戦後の復興の混乱期に台頭し、朝鮮戦争の特需で儲かり、政財界の食い込んでいく中で人心が腐っていき、「仁義なき」世界になっていく。刑務所を出たり入ったりしている広能はその流れには乗れず、一人仁義を抱えて生きている。ラストの葬式で、香典や供花を撃つというのがまた良い。出席している連中は、誰も坂井の死を悼んでなどいないが、建前として香典や供花を出すわけだが、そんな腐った建前を撃ったのだ。
セリフのちからもすごい。名ゼリフのオンパレードで驚く。何回見ても圧倒されてしまう。
コメントする