「ドキュメントでありながら映画である、その境目の作品」仁義なき戦い あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメントでありながら映画である、その境目の作品
お話は原作に基づくものであるから、映画としての価値はどこにありそれは何か?
やはりいきなり冒頭に掛かる津島利章によるテーマ曲だろう
トランペットの鮮烈なフレーズは最早本作から独り立ちしている
手持ちカメラのブレとアップの多用はドキュメント感覚を強めて実話という原作を見事に映像に再現している
本作を観ることによる映画体験を、観客がその場に居合わせ目撃しているという擬似感覚を与えること
それが深作欣二監督の狙いだったはずだ
そしてそれは大いに成功している
そして出演者だ
菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、田中邦衛、金子信雄、梅宮辰夫といった灰汁の強い俳優達が活躍の場を与えられて輝いている
ドキュメント感覚ならばロッセリーニ監督のように素人をオーディションで使っても良いはずだ
つまり限りなく本物をつかうといこと
そこをすでにひとかどの俳優であった彼らを起用したのは何故か?
ドキュメントでありながら映画である
再現ドラマでありながら、フィクションである
その境目の作品を撮る
それは映画館の外と中が入り雑じる感覚だ
これもまた深作欣二監督の狙いだったはずだ
この撮影方針はニューシネマに対応する製作方針というか、映画を撮る態度や考え方
そこが類似しているように思える
お約束ごとでマンネリ化している旧来のヤクザ映画という日本のギャング映画の内容を現代的に刷新せしめたという意味合いでそのように感じる
そしてその革新がヤクザ映画のジャンルを超えて日本の大衆向け映画全体の革新に繋がっていったのではないかと思えるのだ
そこに本作の意義と価値があるのでは無いだろうか
では21世紀の現代において、本作を観ることにどのような意義と意味があるのだろうか
単にそのような功績があった映画として観る価値だけなのだろうか?
21世紀においては反社会的勢力との決別は本作製作当時とは比較にならない程に厳しい
このような映画の製作は企画すら出せないだろう
しかしつい先日もテレビの超人気芸人達が突然に所属事務所から解雇や謹慎の処分を受け世間を騒がしたばかりだ
社会には映画にすべき問題は現実にそこにあるのだ
本作の製作当時では別の意味で映画化が困難であったろう
しかし、これを乗り越えて先人達は本作をこのような傑作に結実させたのだ
果たして21世紀の私達は先人達のように、現実にある問題を映画という映像作品にまとめあげられ、評価できる力があるのだろうか?
ネットで批判するだけになるのだろうか?