劇場公開日 1973年1月13日

「頭が冴えているときに見るべし」仁義なき戦い KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 頭が冴えているときに見るべし

2019年3月23日
PCから投稿

ストーリーなんかドタバタしていてシナリオ完成度なんかわけわからないのに集中が途切れない。本当にすごい映画だ。一瞬でも気を抜くと、人間関係がわからなくなって映画全体がわからなくなる。おそらく本当のヤクザの抗争もこんなふうにバタバタしていて何が何だかわからないうちに殺し合いになってしまうのだろう。登場人物が多く、しかも紹介するのは一瞬、そして人間関係が複雑で重要。なので記憶力の悪い人は映画の全てを味わうことができないだろう。二回見るべし。とにかく縄張りをのっとろうとする組と乗っ取られそうな組の間に挟まってしまったらほぼジ・エンド。ヤクザの世界の混乱した状況、複雑な人間関係、考える暇もなく始まるバトル…そういったリアリティを生で感じさせてくれる非常に迫力のある映画だ。
映像的には、アップになった時の色合いが大判フィルムらしい密度と味わいがでている。撮影にフィルムを使用するタランティーノがこの映画の影響を受けたことを告白しているが、なるほどと思った。タランティーノ作品と違うのは、手持ちカメラによる臨場感の出し方ですな。深沢は決して手持ちカメラを多用する監督ではない。この作品の面白さを出すために、この作品で手持ちカメラを多用しているのだ。
このシリーズはすべて面白い。そして、どうしても見なければいけないのは「県警対組織暴力」。この映画によって戦後のヤクザが最終的にどうなったかということが描かれている。ある意味、シリーズの最高傑作であろう。
そして肝に銘じていただきたいのは、深作欣二は決して仁義なき戦いシリーズだけの監督ではないということだ。このシリーズは彼のキャリアの中の一部でしかない。優れた作品の数数を、ぜひ自らの手で発見してほしい。

KIDOLOHKEN
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