劇場公開日 1973年1月13日

「日本映画の金字塔」仁義なき戦い 明烏さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本映画の金字塔

2017年8月12日
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鑑賞方法:VOD

日本映画史に残る傑作。
笠原和夫の素晴らしい脚本に深作欣二の大胆な演出が絶妙にハマり、独特の熱を帯びた作品になっている。

それまでの「ヤクザ映画=人情ものの任侠映画」という流れに一石を投じた作品。
出て来るのはヤクザと、ずぶずぶの政治家。全くの必然性無く人を殺すし基本的に悪い人達ばかりしか出てこない。比較的人格者として描かれていた若杉ですら、結果的に同じ穴の狢である。社会的にはどうしようもない人達な訳だが、全力の生き様が妙に格好良く見えてしまう。

シリーズを通して使われた広島弁は、作品に速度を与える役割と所々見られるコミカルな印象付けをするのに完璧に機能しているし、実録物として必要不可欠なリアリティを付加している。
役者陣もそれぞれに素晴らしい演技で、後に大御所と呼ばれる方々が目白押しな訳だが、それにしてもこの時代の役者さんの層の厚さと演技の幅は凄い。
もう亡くなった方も多くて本当に悲しい。
特に金子信雄の山守はこの役がなければ「仁義なき戦いシリーズ」はここまで成功しなかっただろうと思えるほど。

まさに1970年代の日本に存在した熱量が滲み出した映画で、見方を変えれば現代にも通じる社会の縮図でもある。広島の裏社会というミニマムな視点の中で終戦以後の社会動勢を透かして見る事のできる作品。

今後日本でこのレベルの作品は撮られないだろう。というか、最近の日本映画はどうしちゃったの??とあらためて考えてしまう次第。

gugi