「演者の佐賀弁がカンペキ!」次郎物語(1987) Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
演者の佐賀弁がカンペキ!
1941年に日活が製作したのを皮切りに、実に4度も映画化されている『次郎物語』。
本作は1987年に公開されたが、それ以降はリメイクされていない。
原作者である下村湖人の自伝的なストーリーとされるが、実は、下村の死によって小説としては未完のままとなっている。
佐賀の旧家・本田家に生まれた次郎の視点で、家族の愛憎、さまざまな出会いと別れを描く。
なぜ、4回も製作されたのか?
おそらく全国共通の日本(ムラ社会)の原風景が描かれているからではないだろうか。
泉ピン子が次郎の乳母役で出演しており、底意地の悪い次郎の祖母の存在含め、『おしん』を思い出してしまう(笑)
先に述べた祖母以外は、登場人物たちはみんな優しい。
加藤剛が演じた父親に至っては、立派すぎて神々しさを感じるレベルである。
高橋恵子演じる母親は、後半になると、菩薩のようになっていく。その美貌も含め理想の母親と言えるだろう。
しかし、である。
いまのZ世代の皆さんは、この映画の世界を信じることができるだろうか?
・ゴハンをおかわりする所作を繰り返し練習したり、
・干潟で泥んこ遊びに興じたり、
・仏壇の前で長時間正座をしたり、
・いたずらをしたら柱に縛り付けられたり、
全編通じて隔世の感が漂う。
もうリメイクはおこなわれないかもしれない。
個人的に一番驚いたのは、
演者の皆さんの佐賀弁がかなり上手すぎて、
観る人が正しく理解できるか心配になってしまうレベルだったこと。
佐賀の人であっても、若い方などは聞いたことないフレーズがたくさん出たはずで、字幕を要するのではないかと余計なことが心配になってしまった。
音楽は、さだまさし。
スメタナの名曲に日本語歌詞をあて、
『男は大きな河になれ~モルダウより~』
として、挿入されている。