「実母と乳母と継母と... 三人の母への気持ちに戸惑うセンチメンタルI・餓男映画」次郎物語(1955) O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
実母と乳母と継母と... 三人の母への気持ちに戸惑うセンチメンタルI・餓男映画
昭和初期の文豪下村湖人による教育小説が原作で、映画化だけでも1941年・1955年・1960年・1987年の都合四回も制作されている名編。
今回放映された1955年版は、昭和初期の旧家の次男坊を主人公に、三人の母との出会いと別れを通して少年期の成長と卒業を切り取ったジュブナイル的人情譚。
既に"母子もの"という物語ジャンルが共感を得られず、少なくとも同時代的作品としては絶えて久しいわけですが、特に自分の世代としては少年期に毎年放映されていたアニメの世界名作劇場が懐かしく、今観ると一周廻って新しいとともに今世の作品には無いドラマツルギーが感じられてなかなかに意義深い作品でした。
原作小説は未完のままに終わったということですが、幼少期よりお家の事情に振り回されてきた次郎が大人になるに際し、戦乱の中でより閉塞状況が強まったとしても来たるべき世代にはまたぞろお家の論理で縛るようなことはなかったと信じたいもので。
コメントする