序の舞
劇場公開日:1984年1月14日
解説
母との愛憎を軸に、師匠・恩師・画塾生など三人の男たちと関わりながら、日本画家として大成していく女の生きざまを描く。宮尾登美子の同名小説の映画化で、脚本は「誘拐報道」の松田寛夫、監督は「人生劇場(1983)」の中島貞夫、撮影は「白蛇抄」の森田富士郎がそれぞれ担当。
1984年製作/145分/日本
原題または英題:Appassionata
配給:東映
劇場公開日:1984年1月14日
ストーリー
安政五年、洛北・大宮村の貧しい農家の娘・勢以は、京都の葉茶屋ちきりやに養女に出された。彼女が二十歳の年に、養父母・島村夫婦が相次いで世を去った。翌明治三年、勢以は婿養子をとったが、五年後には夫に先立たれ、二十六歳という女盛りで二児をかかえた後家になった。それからの勢以は、長女・志満と次女・津也を女手ひとつで育て、生計を支えるために、自ら女を捨てようとする。やがて時は流れ、絵に熱中しはじめた津也は、図画の西内先生のすすめもあって、小学校を卒業すると京でも有数の松溪画塾へ通うことになった。明治二十三年、第三回内国観業博覧会に津也が出品した「四季美人図」が一等褒状を射とめた。すでに師・松溪から「松翠」の雅号を授かっている津也は、早くも天才少女と騒がれる身となっており、勢以も津也の絵の情熱と才能を認めざるを得なくなった。その頃、西内先生がヨーロッパへ留学することになり、津也にとって大きな悲しみとなる。また、村上徳二という青年が松溪塾に入塾し、彼は津也に好意を抱くようになった。松溪の千枚描きに立会った日の夜、津也は師の誘いのままに、料亭へ出向き、抱かれる。徳二に片想いをしていた志満は、本家ちきりやのお内儀のすすめで西陣へ嫁いで行った。津也は絵に打込み、次々と賞をかち取っていったが、画塾内では松溪と津也の仲を言いたてるものもいた。月日が流れ、津也は妊娠した。それに気づいた勢以は、娘を激しく責め、相手が松溪と知り、津也に絵を禁じた。そして勢以は、津也の子を里子に出すことに決め、祇園で芸者をしていた喜代次を頼る。その喜代次の手引で、見知らぬ土地の農家で女児を出産した津也は、京には帰らず、東京にいる徳二を頼って行った。徳二との暮しの中でも、津也の中の絵への想いは捨てきれず、偶然、新聞で見かけた“西内太鳳ヨーロッパ帰朝展”の報に、津也は出かけて行く。そして、徳二に置手紙を残し、西内の滞在する長浜の昌徳寺に走った。西内は弟子にしてほしいと頼む津也のひたむきさに心動かされ、京に戻ると彼女に一軒の家を与えて絵の修業を続けさせた。明治二十九年、津也の「人生の春」が第五回日本美術院展の第一等に輝いた。光彩堂の招きでとある割烹に出向いた津也は、その席で松溪と再会する。かたくなな態度をとっていた津也も、老いた旧師が涙を流すのを見て、再び彼の腕の中に沈んで行った。津也はまた妊娠し、そのことを松溪に告げる。すると思いのほか“誰の子か”と冷たく突き放された。松溪は津也が太鳳の世話になっていることが面白くなく、ある展覧会の審査院として彼と顔を合わせた際、暴言を吐きちらした。津也と松溪の関係が続いていたことを知って激怒した太鳳は、津也に破門を言い渡す。津也は福井の高浜へ出かけ、おろし薬を飲んだ。漁師の電報で勢以は、すべてを許し、津也はちきりやで男の子を産んだが、父なし子を生んだことで世間の風当りはひどかった。三ヵ月後、津也は破門を許されて画壇に復帰した。大正七年、第一回文展の会場で、松翠の「母子」が注目を集めていた。そして、その前に立ちつくす松溪の姿があった。
スタッフ・キャスト
-
島村勢以岡田茉莉子
-
島村津也名取裕子
-
西内太鳳風間杜夫
-
島村志満水沢アキ
-
村上徳二三田村邦彦
-
勢以の少女時代小林綾子
-
津也の少女時代野口一美
-
志満の子供時代高橋美樹
-
志満の少女時代杉沢美紀
-
斉藤松洲三沢慎吾
-
橋田雅雪野口貴史
-
滝川恭山草薙良一
-
原在泉岩田直二
-
今尾景年徳田興人
-
菊地芳文川浪公次郎
-
望月玉泉白川浩二郎
-
島村くら富永佳代子
-
産婆石井トミコ
-
高級料亭の女将三浦徳子
-
薬屋の老人江幡高志
-
高浜の漁師市川好朗
-
勢以の叔父草薙幸二郎
-
利作細川純一
-
勢以の祖母和歌林三津江
-
商家の女子衆山村紅葉
-
坂本の老婆岡島艶子
-
近所のおかみさん丸平峰子
-
近所のおかみさん星野美恵子
-
近所のおかみさん澤亜樹
-
近所のおかみさん徳永真由美
-
勢以の婿養子白井滋郎
-
髪結床の主人タンクロー
-
芝居小屋の親方有川正治
-
ちきりやの若主人大木晤郎
-
仲居江田真弓
-
俥屋小谷浩三
-
ちきりやの番頭壬生新太郎
-
ちきりやの手代菅谷裕之
-
くれ竹の女中大川かつ子
-
伏見玉家の女中門馬由香
-
郵便夫田中博
-
松溪塾々生山田良樹
-
松溪塾々生高谷舜
-
人力車夫木下通博
-
人力車夫浅井誠
-
昌徳寺の小坊主甘枝靖
-
太鳳塾内弟子峰蘭太郎
-
小女七瀬けい子
-
川上音二郎なぎらけんいち
-
喜代次の付人津島道子
-
主家ちきり家主人五十嵐義弘
-
島村甚八大坂志郎
-
光彩堂の主人北村英三
-
慶長堂の主人織本順吉
-
山勘成田三樹夫
-
喜代次三田佳子
-
麻菅井きん
-
ちきりやの内儀高峰三枝子
-
高木松溪佐藤慶