昭和残侠伝のレビュー・感想・評価
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日本映画史に燦然と輝く任侠オペラ
東映任侠オペラの傑作シリーズ記念すべき第一弾。美しい日本語.「仁義」のしきたり.様式美などいろいろとあるが、なんといっても冒頭すぐに池部良が魅せる軒下での仁義を切るシーンであり、受ける菅原謙次も親分の伊井友三郎も小気味良い江戸の言葉。そしてヒロイン三田佳子の美しさ。愚連隊役の悪役商会も松方弘樹や梅宮辰夫も若くて生き生きとしている。
前述の軒下仁義のあまりにも強烈な名シーンがあるのでそれだけでも一見の価値はあるが、あらためて観返してみるとラストへ行くほど退屈になってくるような気もしないでもない。とはいえ、惹きつけるシーン・レトリック・プロットは何度観ても飽きることがなく、昔映画館で拍手喝采・掛け声『イヨっ待ってました!』などが普通に飛び交っていた、という現在では信じられないような逸話もうなづける一本だ。年末やお正月に観るにはいいかもしれない。
高倉健の死を偲んで鑑賞
任侠映画全盛期の作品ということもあり、とても勢いのある、快活な映画だった。
本作で特に興味深かったのは、池部良の“軒下の仁義”。薄っぺらい表現で恐縮だけど、超絶カッコイイ!このシーンが見れただけで十二分に価値があった。
それにしても、当時の任侠映画ってのは、構成がわかりやすいね。酷い目にあっても、耐えて、耐えて、耐え続けて。そしてどうしようもない一線を越えられてしまったときに、ダムが決壊するときのごとく、怒涛の勢いで畳み掛ける。このときのカタルシスたるや!「待ってました!」と思わず叫びたくなる。
そして、この映画において高倉健の人柄は明らかに異質。出来た人過ぎる。普通、ここまで我慢していたら、下の者が不満溜まって反抗するでしょ?でも、それを纏めることができるだけの人望を表現できていて説得力があるから凄い。やっぱり、高倉健は昭和の大スターだわ!
日本人が失った心の記録
これまで、ヤクザ物はあまり肌に合わず、ほとんど見てこなかった。以前高倉健主演の任侠物を観た時、健さんはやっぱりスゴイと心から思ったものの、それ以降任侠物にはあまり手をつけることはなかった。
しかし、今の時代、この作品を観ると、日本人というものの、心のディープさを、本当に深いレベルで感じることができた。
現代の我々日本人が失いつつあるもの。本当に重要な、日本人としての核心のようなものを作品として残してくれている。そういう先人への感謝の気持ちが強く沸き起こった。
この作品が製作された時代、先の戦争から生き延びた、多くの日本人達が、こういった作品を通して、あの戦争で散った戦友達のこととシンクロさせて、大いに共感を集めたことが想像される。恐らく、深いところではそういう男たちの心の深層を代弁する形でこういった作品が作られたことであろうと思う。
よくよく考えてみると、昭和40年代くらいまでは、日本人の一般的なメンタリティーはこんな感じだったんだろうと思う。たかだか50年くらいで随分日本人の価値観も変わったものだ。
外国から軽んじられている昨近、こういったラジカルさとか、命知らずの男気というものは、日本人として、改めて考えるべき時にあるような気がする。
今後、健さんの任侠シリーズを観ていきたい。
男が観ていてクラクラするほどの男なんて、今の時代いないんじゃないか。高倉健がそういう俳優だと痛感した。
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