劇場公開日 1987年4月25日

「案外ワルくない」湘南爆走族 Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0案外ワルくない

2022年7月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

単純

萌える

公開の頃世代が近かったので原作はよく読んでました。映画の前評判もよく伝わってましたが、まあ知らない人には全く分からないと思いますが当時の私は100%「ペリカンロード」派でしたので、若者の主義主張的に反発して観ませんでした…だったような。

30何年経って初めてVODで観ましたが、80年代に劇場で観れば案外面白かったかも知れません。反省。この映画、実はその原作以上に、不良でもツッパリでもない若者たちの物語となっています。軒並み“プチ・ヤクザ映画”or“ただのハチャメチャ騒ぎ”のどちらかになってしまう同種の邦画とは微妙ですが違う。

さらに感じたのは、若い俳優たちの頑張り。たぶん既に小年KINGの漫画が大人気で舞台の湘南イメージ(バブル期前期の大衆的なヤツ。後期〜現在とは別)も確立していたので、俳優さんたちが事前に演じ方を理解していたのでしょう。織田裕二(主役を食う意気アリアリ)、江口洋介(ちょっと存在感にムラがあるけど頑張ってる)のほか、助演や脇役も劇中の若者群像の雰囲気を良く演じています。各マンガキャラクターのビジュアル再現度も、実写現実世界の許容度ギリギリまで高い。
あとこの映画は、“カットごとの”演出・映像がそれぞれなかなか良いです。場面の映画的雰囲気が凄く出ているし、上述の若手俳優たちの演技と良く噛み合っている。見てませんが、予告編やテレビCMでは良い物が出来たのではないでしょうか。

ただ反面、更に言えばこの映画の致命的な限界?がそこにあり、各カットやシーンからストーリーを運ぶ構成や脚本が“ぐだぐだ”とか評する以前に、「映像をただ平坦に横つなぎしただけ」みたいになっており、間伸びと言うかカット・シーンの意味が消失と言うか、殆どあり得ない物語作りになっています。

素人の憶測で僭越ですが、この作品の作り手は撮影担当やTVCMの出身か何かで、本作でそれ以上の仕事をしようと考えず制作を請け負ったかのようにすら感じてしまいました。
結局好感を持って鑑賞していても、各カット・シーンの良い感じと熱演が次々バラバラに現れては消えるだけの殆ど「シーンごと映画」として終劇してしまい、共感や感動を感じるヒマがありません。もしかしたら、今からでも誰かデキる人がオリジナルから再編集と音響をやり直したら作品が生まれ変わるかも知れませんね。
そう考えると、当時興収が上がらず続編が立ち消えたのは残念です。なかなか惜しい青春映画です。

keebirdz