出張のレビュー・感想・評価
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いいことの後には・・・。
日和見温泉の宿屋に泊まった熊井はフラッと地元の飲み屋で二人の女(亜湖、松井千佳)と盛り上がり、二人を相手にいい思いをする。武装ゲリラに連れられ、身代金のための人質となり、どうなることかと思ったら、かなり丁重な扱いで親しげにされる。国家権力に対する革命とかなんとか、どうも遊び感覚のゲリラにも思える。 時代はバブル崩壊前の時期だろうか、熊井の会社もコンピュータ関連で急成長を遂げていたようだし、サラリーマン個人よりは金がすべてに優先されている時代。身代金の交渉では熊井の命よりも、会社が生命軽視というバッシングを避けるために仕方なく応じたという皮肉。そして熊井の妻(松尾)が部長と一晩過ごしたという無情な響きもサラリーマンの悲哀を物語っているのだ。そんな下界の冷酷さに比べ、ゲリラたちの生き生きしている様は熊井にとって魅力的に映る。別れ際の寂しさは、そのまま彼が仲間になるんじゃないかとも想像してしまう。 完全な脚本、というより、あの飲み屋の一件がまったく物語に溶け込んでいないところも魅力の一つかもしれない。普通のエンタメ作品ならゲリラと関係があるはずなのに(笑) ゲリラというのが登場した時点で、70年初頭の作品かと思ってしまった。バブル期を考えてみても、時代そのものより、いつの時代でもサラリーマンは寂しいもんだということなんだろうなぁ。なかなか面白い。
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