「憧れのたま子先生に一生ついていきます」Shall We ダンス? とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
憧れのたま子先生に一生ついていきます
「おばあさんでがっかりした?(ふふふ)…たま子先生って…呼んでね」(思い出し引用)のところで毎回「はいっ!!」って応えている自分がいる。
杉山の下心はお見通しの上で、軽くピシャリとやりつつ、笑顔で受け止めてくれる。
超個性豊かな生徒達と、堅くて自己中なもう一人の講師。そんな面々を抱えて、ご指導されるたま子先生。杉山のこともいつしか競技ダンスの世界に引き込んでいく。「否」を言わせぬあの笑顔!(笑)
あのお年にも関わらず、その背筋、立ち振る舞いの美しさに加えて、そのお人柄も憧れです。
人をまとめていくことの難しさに日々イライラしする毎日。疲れた心にたま子先生の笑顔が、一服の清涼剤。
計算された、際どいバランスの上に成り立っている映画。
観て心が温かくなる。
けれど、観る時によって感想も変わるかな?
闇落ちしているときは、予定調和の筋をつまらなく感じたり、鼻につく演技にイラっとしたり、夫婦の関係に腹が立ったり…。
ちょっと心に風が吹いているときは、杉山の冒険を応援したくなったり…。
強烈個性豊かな面々が出演されている。
大受けしている、竹中さん、渡辺さんの演技も使い方一歩間違えば、彼らだけ浮くか、コテコテの映画で2時間も耐えられないものになる。地味で一見無個性な杉山を配することでバランスをとっているが、この杉山が無個性のようでいて個性的な役回り(どこにでもいそうなサラリーマンて実は一番難しい。観ている人誰もが自分に重ね合わせられるって!!!)そして彼らを繋ぐ徳井さんと田口さんがいい味出している。
それ以外にも『ミッケ!』みたいに、え?!この役をこの方が?みたいな楽しみ方も…。(微妙に悪目立ちたがりしている人もいるが、ギリギリのところで映画に収まっている)
草刈さんの台詞の言い回しは確かに鼻につく。特に本木さんとのやりとりは残念。だけど終盤の「shal we dannce?」は、ああこの方はやっぱり世界が舞台の方なのね、だから英語の方が得意で日本語うまくないんやんと変な納得をしてしまったりして。
そして、ああ、プリマ中のプリマだよね、と納得させてしまう、体での演技。小首をかしげるだけなのに、ちょっとでも触れたたら壊れてしまいそうな雰囲気を醸し出す。圧巻。いっそのこと、ショックで声の出ない役でパントマイムでの演技にしたら良かったのに。
杉山の妻は「毎日定時帰り」と文句言ってたくせに、杉山が趣味を見つけたとたん「浮気?」ってどっちやねんと突っ込みたかったけど、この夫婦のダンスが一番好き♡。
会場も独特。華やかな衣装、華やかなダンスホールが映し出される。だけど、競技場は体育館。練習場はビルの一室。そんなアンバランスさがこの映画を地に足付けたものにしている。(実際にそうなんだろうけど)
「ダンスはパートナーシップ」と、転倒の際パートナーをかばって骨折したエピソード。そうしてくれなかったと怒る舞。相手がそうしてくれるように相手を扱ったのかと指摘する父。そして…。
はあ、奥が深い…。複雑。
つっこみどころ満載。ちょっと残念な場面もあり、初見の時は☆4つだと思った。
でも、仕事で疲れてくると観たくなる映画。
もし習うなら、舞先生ではなく、たま子先生を指名したくなる。
「楽しく踊れればそれでいいのよ」はーい。