写楽のレビュー・感想・評価
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ハリウッド進出前の真田広之さんの入魂
昨年はハリウッドに進出した真田広之さんが「SHOGUN」で高い評価を得て日本の時代劇の魅力と底力を世界に発信して、日本人として誇らしい気持ちになりました。
また今年は蔦屋重三郎を主人公にしたNHKの大河ドラマが始まり、蔦屋重三郎が出てくる映画はないかと探してみたら、松竹創立100周年記念映画で真田広之さんが主役をつとめた1996年公開の『写楽』という作品に蔦屋重三郎が出ていたので、これは見るしかないでしょ!と鑑賞してみることにしました。
当時は真田広之さんがジャパンアクションクラブの看板スターとして、映画やドラマで驚異的なアクションや殺陣を披露して人気を博していた時代で、当作では30代で油の乗り切った全盛期の真田さんが、江戸時代の歌舞伎の舞台の「トンボ」役者として登場して、ガンガンに歌舞伎の舞台で飛びまくる!!
「うひょー!」と雄叫びをあげたくなる贅沢な映画でした。江戸時代の最高にエキサイティングなエンターテイメントだった「歌舞伎」が真田広之さんの超人的な跳躍によって、さらに最強の舞台になって、興奮が止まりませんでした。
永久保存版! 松竹100年記念らしいスペシャルな「歌舞伎」のシーンでした。
また、30代の真田さんの男の色気がすごい! 半玉から花魁に出世する「花里」を演じた葉月里緒奈さんが浮世絵から出てきたような、華奢で可憐な美少女で、あまりの美しさにクラクラします。吉原の美少女(半玉)が花魁(女)として変貌していく様は強烈で、絵の心得がある人なら、「絵にかきたい!」と思うだろうし、少女の表情を残しながらも、「女」として生きていく彼女は、狂おしいくらい愛しくて、花里にぴったりの女優さんをよく見つけたなあと、さすが松竹100年記念映画です。なにもかもが丁寧に吟味されて制作されています。
この映画の後、花里を演じた葉月さんは「魔性の女」などとワイドショーで取りざたされたりしていましたが、吸い込まれるような美しさで、「美しさは罪!」
この作品はフランキー堺さんが製作総指揮をとって松竹の総力を結集して作られて時代劇なのですが、昔フランキー堺さんが主演をつとめた名作『幕末太陽伝』のエッセンスが随所にちりばめられながら、贅を尽くした色街吉原や江戸庶民の暮らしが生き生きと描かれていて、すばらしい作品でした。
それで、蔦屋重三郎役は製作総指揮のフランキー堺さんでした!
映画の感想を書くときに「不満もかけ」とアドバイスをもらったのですが、この作品は真田広之さんが、日本の時代劇の伝統の灯を守り継承していくことを誓い、松竹映画の制作陣やフランキー堺さんたちから「日本の時代劇の伝統」のタスキを受け取ることになった、記念の作品ではないかと思います。真田さんはあれから、ずっと日本の時代劇の要である「殺陣」を継承て、鍛錬を重ねて生きてきたのではないか。武士道を究め、日本映画のトップランナーとしてハリウッドへ乗り込んで、現地で地足を固め、日本の時代劇でエミー賞を獲るところまできたんじゃないかと思いました。
若き日の真田さんに「大和魂」が入魂されていった現場がこの写楽の撮影現場で、日本のチャンバラ映画の歴史のタスキを握りしめて、今も走り続けておられるような気がしました。
しゃらくさいの写楽
主人公である写楽不在のシーンが結構多い。ストーリー的にずっと受け身の存在で、自分の意志でいくのは花里のことだけ。おかん(岩下志麻)にスカウトされて一座に加わり、蔦屋重三郎(フランキー堺)の完全プロデュースにより絵師として人気が出るようになった。おかんからも蔦屋からも誘われた際に「しゃらくせぇ!」と返していて、蔦屋にそれで写楽と名付けられる。
はじまって30分くらいで何の映画だったか忘れるくらい蔦屋重三郎の存在が大きくて、蔦屋の死が物語の終わり。人物より時代、江戸文化や風紀、その背景に何があったかまでを懇切丁寧に描いていて、そうゆうのも何の映画を観ているかわからなくなる原因。
松平定信がとにかく厳しくて、思想書や宗教本でもなく、只の娯楽本までを燃やしたりしたご様子。庶民は贅沢すんな、愉しむな、武士の世が終わらぬようにする為の民間統制?的な意味もある倹約令。アートには関心が高いようなのだけどそれよりも庶民の取り締まりが先行する。
台詞一言で済みそうな混浴禁止も役人衆がゴヨウダコヨウダと取り締まり風呂屋に強行突入する場面をわざわざ撮っている。同じく遊郭の足抜けも、遊女を吊るしてドスで刺してギャー!グサっ。ギャー!という場面をシーンをわざわざ撮っている。お江戸でござる的に鑑賞するのはいいかもしれないが、写楽に絞りこんで欲しい。群像劇だとしたら人物にあてた脚本があまり上手くない。
その時代に活躍した人みんなを写し出していて、江戸の雰囲気全体を味わう映画だったような感じもある、扱う人数多過ぎた。印象に残った存在感ベスト9は①蔦屋重三郎②歌麿③写楽④花里⑤幾五郎(十返舎一九)⑥松平定信⑦おかん⑧鉄蔵(葛飾北斎)⑨大田南畝と市川團十郎と山東京伝と岩井半四郎
写楽が集団暴行受けて死んだ、と見せかけて生きていて、葬式は蔦屋重三郎のものでしたエンド。
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