「物語を放棄して突き進むジャズ演奏のカタルシス」ジャズ大名 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
物語を放棄して突き進むジャズ演奏のカタルシス
岡本喜八生誕100周年記念の上映会で、久しぶりにスクリーンで見直すことができた。しかも35mmフィルムでの上映! いま改めて観ても素晴らしい作品だし、岡本喜八の反骨精神は現代でも通用すると思うのだが、まあ、序盤の黒人たちが日本に漂着するまでは結構タルい。これは21世紀の感覚だからタルく感じるのではなく、昔からずっと何回観てもタルいのだが、監督の遊びココロをぶち込んだシーンであることは伝わってくるので、愛嬌はある。
とはいえ白眉なのは、やはりクライマックスの延々と続く演奏シーン。『江分利満氏の優雅な生活』でも違う形で試みられていたが、物語の定石をヒックリ返し、もはやどこに進んでいるのかわからないまま、ヘンなカタルシスが訪れて気がつけば涙ぐんでしまう。そして、そのアバンギャルドなちゃぶ台返しが、完全に「戦争なんてくそくらえ」という映画のテーマと直結しているのがすごい。
上映イベントでは、映画のエンドクレジットが終わるや、最高のタイミングでおじいちゃんおばあちゃんたちによるディキシーランドジャズバンドが客席から乱入してきて、そのままミニコンサートが始まるという心憎い演出で、あんなにシームレスに映画と生演奏が繋がった成功例を他に知らない。映画と音楽の最高の相乗効果を堪能しました!
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