「カオスの中に響く平和」ジャズ大名 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
カオスの中に響く平和
岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その9
原作・筒井康隆 x 監督・岡本喜八 という異能の組み合わせによる怪作です。時は幕末、国の行く末が不運急を告げる時。漂流ボートで日本に流れ着いた黒人ミュージシャンの影響でお殿様がジャズ演奏に目覚めてしまうというお話です。
そもそもが突拍子もないお話なのですが、岡本監督の脚色で終盤それが更にアクセル全開になります。官軍・佐幕派が入り乱れて斬り合いをしている傍で、ええじゃないかの大群が押し寄せ、人種入り乱れたジャムセッションに三味線・琴・琵琶・横笛、更に、算盤・鍋釜・洗濯板までが混じり合い、更に何故かミッキー・カーチスさんがエレキギターで乱入すると、山下洋輔さんがピアノを弾き始め、タモリさんがチャルメラを吹くという出鱈目さです。そのカオスの竜巻きには
「こんなバカバカしい世の中やってられるかよ」
という哄笑が響いていました。でも、その一方でなぜか、「こんなバカな映画を上映できるなんて、やっぱり平和は大切だなぁ」としみじみ感じたのでありました。
そして、本作のエンドロールが終わった途端、客席通路にスポットライトが当たり、外山喜雄とデキシーセインツのバンドが華やかな演奏を繰り広げながら行進しステージに上がりました。そのタイミングと華やかさがカッコいい~っ。そして、それからのサービス精神あふれる演奏で本当に楽しいひと時を送る事が出来ました。最後の "What a wonderful world” ではウルッと来てしまう不覚。やっぱり平和は大切だぁ。
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