「怒りの 矛先」死の棘 jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
怒りの 矛先
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妻、島尾ミホの精神疾患の記録でもある 夫 敏雄の小説を映画化
愛人の発覚により、壊れてしまった妻を 松坂慶子が好演している
島民の娘が (島民を犠牲にする)特攻隊長である敏雄と 大恋愛の末、結婚したのに 戦後ぬけぬけと浮気!
妻 ミホの病気を 赤裸々に書き、世間に公表してしまう
それで 家族は口糊をしのぎ、又 夫が評価されていく、ということ
そして 彼女もまた、文筆の才があるということ
何重の意味でも 自分が犠牲者になっていることに、体の奥から ふつふつと 沸き上がる怒り!
ありとあらゆるものに 腹がたつのは、よく判る
映画は 時に、この葛藤をコミカルにも見せて笑いを誘う(ところに 救いがある)
才能のある妻の 夫への叱責とツッコミは 的確である
愛人が見舞金を持って、島尾宅を訪れる辺りの嫌らしさ(敵情視察)と偽善
夫の 妻にとことん付き合うことを決めた、計算(小説家としての)と偽善と被害者面
愛は何処へいったのか?
鋭すぎる妻の自問自答は 怒りを呼び起こし、正気を失わせる
彼の小説が いつの間にか、「深い夫婦愛の物語」に置き換えられて、世間で美談になっていることも、
彼女の心を傷つけたに違いない
これは 今 巷で言われている「歴史の改ざん」だよね
それでも 妻と夫の 激しい精神的葛藤の物語は、
珍しく 興味深く見た
部屋から見える 竹垣はグシャグシャで、空はいつも 曇天
外の風景も 奇妙な不安定さを見せ、妻(と夫?)の 心象風景を現している
この 原作を映画化した監督の着眼と、表現に感心するが 妻の怒りの激しさに、心を奪われる
敏雄氏の死後、喪服で暮らした 妻の心中や いかに?
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