劇場公開日 1963年4月18日

「下町にふりそそぎ輝く太陽の光を受けて若者達はどこへゆく」下町の太陽 星組さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0下町にふりそそぎ輝く太陽の光を受けて若者達はどこへゆく

2025年4月9日
PCから投稿

日本がどん底から這い上がろうとしていた時代、
東京の下町で一生懸命に生きる人々を描いた物語。

町の工場で働く町子はある疑問を持ち始めていた。毎日汗水垂らし働く自分や同僚の未来、下町を抜け出して団地に住む夢、女にとって結婚は幸せなのか、希望の終着地点はそこに有るのか、戦争を生き抜いた老人達は陽だまりの中で笑っている、工場や車の排気で濁る地上の空気、地上で生きる自分達の夢は確かなのか、何が正解で何が間違いなのか、手探りの毎日と見えない未来に揺れる心があった。

賠償千恵子演じる町子は笑い
家族の問題と恋の行方に悩む。
それでも彼女は明るく生きる。

物語は結末を見せないで終わる
いつもの町子の姿を映し終わる
このあと彼女がどんな恋をして
どんな結婚生活を送るかわからない。

山田洋次監督は若い彼らを通し
幸せや、やり切れなさ、残酷さ、
そんなものを当時の日本人に見せた。
同時に未来に生きる僕らに教えた。
日本にはこんな時代があったことを。

タイトルの「太陽」の意味を考えてみた。
太陽は下町で明るく生きる町子ではなく
あの下町に降り注ぐ光を受け生きる人
未来に進もうとする若い人たちだと。

「下町の太陽」
降り注ぐ光は同じでも
受け取る人で意味は違い
ある人には活力となり
ある人には無でしかない。

映画は現実を映している。
埃っぽく匂い立つあの辺り
今はあの辺りの面影はなく
20代の当時の出演者は
今は80歳を過ぎている。

そして

東京スカイツリーは
あの辺りである。

星組
PR U-NEXTで本編を観る