地震列島

劇場公開日:

解説

大地震に襲われる東京。再三に渡って地震を予告していた若き地震学者の勇気ある行動を描く。脚本は「絞殺」の新藤兼人、監督は「岸壁の母」の大森健次郎、撮影は西垣六郎がそれぞれ担当。

1980年製作/127分/日本
原題または英題:Magnitude 7.9
配給:東宝
劇場公開日:1980年8月30日

ストーリー

三原山火口で溶岩を観測する地震学者の川津陽一は、近い将来、大地震が東京を襲うと直感する。東海地震予知の月例会。陽一は観測データの異常性を訴えるが、学者たちは消極的で、防火対策は政府の仕事で、学者の職域ではないと取り合わない。遂に彼は三十日以内に直下型地震が東京を襲うと暴言を吐き、丸茂会長に撤回を求められ、孤立していく。そんな陽一の心を癒してくれるのは、研究所の所員、芦田富子だ。陽一は地震の権威、故川津宗近の娘、裕子と結婚していたが、二人の間はすでに冷えていた。ルポライターの橋詰雅之とカメラマンの梅島一枝は各地の異常な自然現象を取材していた。雅之は富子と同郷で彼女を密かに愛している。また、一枝も雅之に思いを寄せていた。燃えない車の開発、トンネル内での火災避難実験など陽一の行動はエスカレート。雅之は、富子のことがシコリとなっていたが、陽一の行動に関心を抱き、キャンペーンを展開する。政界、財界が集うゴルフ大会の日、首相が「東京を震度七の地震が襲ったらどうなる」と丸茂に質問。背後にいた陽一は「東京は世界一の無防備都市です」と答えてしまう。この発言で、陽一はますます孤立、研究所は閉鎖されてしまう。ある夜、陽一は別れを告げる富子に、逆に結婚を申し込む。熱いキスを交す二人。数日後、渋谷の料亭で陽一と裕子の離婚の話し合いが行なわれることになった。地下鉄で料亭に向かう陽一と裕子。部屋で仕度する富子。富子に結婚を思い留めさせようと彼女のマンションのエレベーターに乗った雅之。出張帰りで羽田に向かうジャンボ機に乗っている丸茂。そこへ、震度七の地震が襲ってきた。急ブレーキをかける地下鉄。将棋倒しの乗客、血と悲鳴と死の地獄と化した地下に、東京湾の海水が濁流となって流れ込み、さらに炎と煙が襲う。地上では、高速道路が崩れ、自動車が炎上。富子は崩壊するマンションの部屋に閉じ込められてしまう。そのとき、宙づりのエレベーターから脱出した雅之は富子を救出する。一方、陽一も、冷静な判断で乗客たちを誘導する。天災は止めることは出来ない。しかし、人間の愛と勇気と英知によってその被害を最小限にくい止めることが出来ることを、二人の行動は証明したのだ。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.50196 この時期本格特撮ものは3年に一度

2024年9月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1980年公開
東宝特撮にしては結構場所を狭い範囲に絞った作品。
サスペンスに重きをおいたか。
多岐川裕美はセットではあるが
結構高い場所でエレベーター宙吊り場面に出くわす。
その恐怖の表情は本物。
勝野弘は案外こういった空想モノにリアリティを
もたらすにはいいんでない。
特撮も及第点。
地下鉄の場面は緊張感があっていい。
が、最後なんかテンション高いおっさんは不要。
70点
初鑑賞 1980年9月5日 三番街シネマ1
パンフ購入

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NWFchamp1973

4.0パニック映画として高い完成度だと思う

2020年6月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

地震映画は沢山有るようで実はそう多くない

大地震を目玉に扱う以上、多額の特撮シーンが必要となるからだ
なので、予算が掛かることを承知で撮られた著名な大地震映画の特撮シーン使い回した特番的なテレビ映画が必然的に多くなるわけだ
古くは1936年の米国映画「桑港」、1974年の米国映画「大地震」とかが元ネタになっている

本作は映画だが、1973年の日本沈没の特撮シーンを流用している点では同じだ
しかし特筆すべき点が2つある

ひとつは大震災の描写について専門家の知見を大幅に取り入れていること
東大教授や元地震観測所所長を特別スタッフとしてクレジットしている
専門家が参加しているのは日本沈没でも同じだが、より震災の映像リアリティを上げている
ビルの壊れ方、燃え方、高速道路の落ち方の映像表現は日本沈没からさらに進化を遂げている
本作の15年後の阪神大震災、31年後の東日本大震災の実際の映像と見比べても、かなり実際に近い映像表現ができていたのが分かるだろう

隅田川の堤防陥没による決壊で、下町全域の水没や、トンネルを伝わっての地下鉄の水没設定は、2019年の巨大台風の水害で殆どそのすればにまで切迫していた
その被害想定は本作そのままだったのだ

ふたつ目は脚本が新藤兼人であることだ
地震映画は結局地震がクライマックスになるということが決まっている
逆にいうとそれまでは人間ドラマであるということだ
人間ドラマが大地震による衝撃で街や建物が壊れてしまうだけでなく、その人間のドラマ自体を突き動かすきっかけの仕掛けとなる

つまり地震は、雪や雷雨や霧といった人間ドラマの良くある転換の背景と変わることがない
より大きな衝撃であるということが異なるだけに過ぎない

だから新藤兼人が脚本を担当したわけだ
それは成功していると思う
彼のような技巧がなければ、良くて1974年の米国映画「大地震」の劣化縮小版に過ぎなくなっていただろう

序盤の政府の専門家会議のシーンは、昨今のコロナ対策専門家会議を思わせてドキリとした
ドラマパートにもリアリティがあるということだ

水没した銀座線の赤坂見附駅と青山一丁目駅の間の地下トンネル内のシーンはポセイドンアドベンチャーの有名シーンのモチーフを借りて来て夫婦の再構築を演出している

終盤の大火災の中の雷光は、その後の高架水槽への落雷と大水の落水はタワーリングインフェルノのモチーフだ

そしてそれは黒い雨の予告でもあり、戦時中の東京大空襲や関東大震災とつながる記憶を結びつけるものだ
同時に特撮班と本編班が演出で見事につなぎ合わされている良い仕事でもある

続く荘重な音楽の中、夜明けの光が眩しく暗雲から差し込んでくる感動的なラストシーンとなる
明けない暗夜はないのだ

その時、人間ドラマもまた完結している
一組の夫婦はアンハッピーな結末だが、夫人は夫との永遠の愛を取り戻している
もう一組のカップルはスタートラインに立つことができたのだ
ヒロインは悪夢から覚めることができるのだろう
悪夢とはこの大震災の夜のことではなく、不倫と略奪婚の悪夢だ

パニック映画として高い完成度だと思う

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あき240

4.0為政者には今一度観て欲しい映画

2019年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

災害パニックものについつい関心を寄せてしまうのは災害列島日本に住むが故、なにかサバイバルのヒントが得られるかもしれないというさもしい下心かもしれません。
本作の被害状況もフィクションとは思えない恐ろしさ、まさに15年後の阪神淡路大震災の惨状がかぶります。地震ならずも荒川が決壊すれば町屋から地下鉄構内に浸水し大被害になるという警鐘は新聞、テレビでも伝えられているところですし、実際に赤坂見附駅は大雨で浸水騒動もありました、湾岸の石油コンビナート炎上は3.11でも発生していますから本作の想定は予見といっても良いでしょう。むしろ映画製作当時より建築物やインフラの老朽化は進んでいますし一極集中の加密度は増していますので実際に起これば阿鼻叫喚の地獄絵図かもしれません。為政者には今一度観て欲しい映画です。
地震映画は多いですが破壊映像だけがど派手なパニック・エンタテイメントや恋愛関係や家族描写など前置きばかり無駄に長くて起きたら一瞬という地震がおまけ的なものが多いです。実際の都市部で地震が起きたらどういう惨状になるかの描写の優れた地震物はアメリカNBCのテレビ映画「ロスアンゼルス大地震」(1990年)ですが劇場公開されていないのでDVDで観るしかありませんがお勧めです、似たようなタイトルで「M10.0ロサンゼルス大地震」というのがありますがこちらは酷いB級映画ですのでお間違いなく。1999年にCBSもニューヨークに舞台を変えたテレビ映画「アフターショック/ニューヨーク大地震」を作っていますが救援活動が主で多少綺麗ごとに思えます。
本作は地震描写は専門家の監修と特技監督の職人技でCGにも引けを取りません、お見事です。脚本:新藤兼人ですから人間関係を描くのはお手のものでも昼メロっぽさは硬派な災害映画には不向きかも知れません、ただネタがネタですので多少映画っぽくしないと各所からクレーム続出になるのを田中友幸さんが恐れたのかもしれませんね。

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odeonza

3.0全てを引き裂く大地震の猛威に備えなければ。

2018年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

 DVDで鑑賞。

 東宝が「日本沈没」や「ノストラダムスの大予言」などの“パニック映画路線”の一本として世に放ったディザスター・スペクタクル・ムービー。

 脚本が新藤兼人のためかハイライトである地震発生までの緊張感を巧に保ちつつ、主人公の地震学者・川津とその妻、そして不倫相手の三角関係の模様が昼ドラチックに展開されました。
 妻役の松尾嘉代の夫の不義を知ったときの眼光がめちゃくちゃ怖い…。女の情念が迸るようでした。不倫相手役の多岐川裕美は上品で可憐でとてもお美しい限りでした…。

 3人の話し合いの日が皮肉にも地震発生の日となってしまいました。
 不倫相手は住んでいるマンションが倒壊の憂き目に遭い、炎に巻かれながら決死のサバイバルを強いられました。崩れ行くマンションの実物大セットがとてもリアルで恐怖を掻き立てられました。もし自分がそこにいたら…と考えるとぞっとしました。
 一方、川津とその妻は話し合いの場へ向かうために乗った地下鉄で被災。決壊した隅田川の濁流が流れ込んだために地下トンネルに閉じ込められてしまいました。大勢の人々が取り残され、脱出の方法を探ることになる場面がスリリングでした。生存本能を剥き出しにした人の群れの中で、生き残りを賭けた重大な決断を迫られる究極の人間ドラマが待ち受けていました…。

 本作のテーマはズバリ“首都直下型地震”。
 地震学者などの有識者を招聘して練り上げた綿密なシミュレーションの下、中野昭慶特技監督の面目躍如たる大爆破を伴った迫力の特撮シーンにより、東京を襲う大地震の脅威を訴え掛けて来ました。
 倒壊した建物などで道が塞がれ、救助活動や消火活動が妨げられ消防隊が身動きの取れない状況に陥るなど、現状の大都市がその猛威に対していかに脆弱で無防備なものなのかを突き付けて来るようでした。

 大きな災害によって無残にも失われてしまうものに、無情なやるせなさを感じました。愛や絆、大切なものも何もかもを容赦無く引き裂いていく自然災害…いつか起こることは明白です。
 東日本大震災以降、地震や自然災害がその苛烈さを増す傾向の中、我々ができる備えを検討しなければならないなと改めて思いました。

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しゅうへい

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