「来い、奈落へ来い、炎熱地獄へ来い、焦熱地獄へ来い」地獄変 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
来い、奈落へ来い、炎熱地獄へ来い、焦熱地獄へ来い
なかなかお目にかかることのない映画だったので楽しみだった。たしかに芥川の世界だけど、やはり時代のせいか、全体にどこか大仰な演出に思えた。役者の演技も濃い。そりゃ中村錦之助(萬屋錦之介)と仲代達矢だもの、熱い演技合戦になるのは当然だとは思うし、物語自体も狂気を孕んだ大殿と良秀の丁々発止なのだからこうなるわな。そこに芥川也寸志のクドい劇伴。二人の意地の張り合いに巻き込まれた良香を見せつけられては尚のこと、胃もたれしそうな後味になった。嫌いじゃない、だけど、味付けが濃い料理。せめて塩分は控えて欲しいと言いたくなる。いま、だれか他の監督がこれを映像化したらどう仕上がるのだろうか、という想像こそが楽しく思えた。
鑑賞後、講演。芥川也寸志の音楽について。
也寸志は龍之介の三男であることを忘れかけていた。也寸志はまだ自分と被っているし、そう思うと龍之介生きた時代と言うものはそう遠くないもののように思えて、急に身近な存在に感じた。当時最大人数によるオーケストラ、舞曲風の音楽と鞭の音、オスティナート(執拗反復)と呼ばれる音楽、他の映画にも流用される同じメロディ、等々。好みの問題だけど、うるさいのだよなあ。いいから音楽はもう少し下がっててくれ、と思う。
コメントする