「90分が恐ろしく長く感じる。退屈だが、何かが心に引っかかる。」3-4x10月 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
90分が恐ろしく長く感じる。退屈だが、何かが心に引っかかる。
草野球チームに所属する雅樹がヤクザとトラブルを起こしてしまい、その対立が次第にエスカレートしていくというサスペンス&コメディ映画。
監督/脚本は『戦場のメリークリスマス』(出演)『その男、凶暴につき』の、「世界の北野」こと北野武。
ヒロインであるサヤカを演じるのは、当時まだ駆け出しの女優だった石田ゆり子。
沖縄のヤクザ上原を、監督であるビートたけし自身が演じる。
北野映画は割と好きで何本か見ているんですが、本作は初めて観賞しました。
『あの夏、一番静かな海』に通じるセリフを極力少なくした演出。
『ソナチネ』に通じるヤクザ&沖縄&銃撃戦。
「キタノブルー」と呼ばれる青を強調した色彩感覚など、のちの北野映画を特徴する演出、シナリオが本作でも見て取れます。
映画は正直かなり退屈でした。何しろセリフが少ないし、BGMは一切ないし。
ストーリーも短いお話を長く引き伸ばした感じ。
柳憂怜演じる主人公の物語に、ビートたけし演じるヤクザの物語が入れ子型に挿入されますが、正直うまく機能していない。
ビートたけし演じるヤクザの狂気性が前に出すぎて、柳憂怜側の物語がすごく薄まってしまっているように感じました。
では、ダメな映画なのかというと、そうとは言えない不思議な魅力をこの作品は持っていると思います。
お笑いを極めたビートたけしだからこそできる緊張と緩和の笑いは見事で、暴力的で凄惨なシーンにもかかわらず、逆にとてもコミカルになっているのは流石です。
映像も美しく、どこを切り取っても絵になる。
全体に流れる詩的な感覚が癖になります。
柳憂怜をはじめ、ガダルカナル・タカ、ダンカン、渡嘉敷勝男などたけし軍団がメインキャストを務めていますが、みんなすごく演技が上手い!
タカさんのヤクザ演技なんてめちゃくちゃハマっていて本当に怖かった。
エンディングは一体どういう意味だったのか?不思議な後味が残ります。
万人にお勧めできる作品ではありませんが、不思議な魔力を持っている映画です。