劇場公開日 1954年3月31日

「日本映画の至宝です」山椒大夫 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本映画の至宝です

2019年9月21日
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鑑賞方法:DVD/BD

日本映画の至宝です
世界の映画遺産のひとつに間違い有りません
圧倒的な美意識、構成美
900年以上昔の平安時代そのものはかくやと言うべき美術と衣装、考証、音楽
何もかも圧倒的です

姉弟を逆転し兄妹に設定変更してあるなど、脚本も伝説や森鴎外の原作から見事な翻案です

田中絹代の品位があり気高い貴婦人ぶりは彼女だけにしか出せないものでしょう
そしてラストシーンでの零落の果ての姿でさえもその品位と気高さを漂わせることなど彼女にしかできないものです

彼女によりラストシーンの強烈な感情の破壊力をもたらすことが可能になったといえると思います

抱き合う二人をロングショットで高めから捉え、クレーンで視線を高く水平線に上げつつパンしていくカメラは本作を観終わった私達観客の感動をものの見事に表現して代弁してくれるのです
これぞ溝口監督といえるカメラでした

小中学生の内に、生涯の映画の基準の原点として一度は観ておくべきものです

丹波の国の国分寺は今の天橋立駅の対岸にあったそうです
山裾の高台の原っぱに白い木柱の碑が立っています
国府はそこから1キロ程東の辺りにあったのではとされているようです
山椒大夫の屋敷は映画では岩滝温泉の辺りに設定されているように見えます
昔は京都からは山また山で恐ろしく時間がかかりましたが、今は京都縦貫道で京都市内から2時間もかからず到着します
日本三景のひとつ天橋立観光の際は本作を思い出してみてはいかがでしょうか
国分寺は直ぐ近くです

あき240