劇場公開日 1939年10月9日

「溝口が教える 人生の浮沈」残菊物語(1939) jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0溝口が教える 人生の浮沈

2018年8月24日
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古典芸能に詳しい 溝口監督ならではの傑作
二代目菊之助をモデルにした 物語だが、
この菊之助を演じているのが 花柳章太郎である
(後の人間国宝)
主人公をわりとサクサク演じているのに(情感たっぷり、というのではない) 監督の演出、森 赫子の演技と共に 泣かされてしまう
価値ある男(未開の芸の才能だけではない)に 尽くすというのも、女の 一つの愛の形なのだろうと思う
悲しい結末だが、人生を賭け 勝負に勝ち、意地を見せることが出来たふたり(特に お徳)
これもある意味 幸せ、と言えよう

だが、誰かが浮かべば、誰かが沈む、
というのも 人生の別の一面であり、
それに皆 泣かされてしまうのだと思う

溝口が惚れた 花柳章太郎の芸を 出来れば見て見たくなった
(特に 出世役と言われる「日本橋」のお千世をまず… )
この作品と共に、彼の芸をフィルムに焼きつけた
溝口健二に感謝

なお、花柳と森の間には トラブルがあり 後日 森が本を出版している(章太郎、残念!!! )

jarinkochie