さらば掟
劇場公開日:1971年9月15日
解説
一人の女を愛したことから巨大な暴力組織に追いつめられる男の苦悩を描く。渡哲也の松竹主演第一回作品。舛田利雄の原案を「関東破門状(1971)」の鴨井達比古が脚本化した。監督は、「暁の挑戦」の舛田利雄。撮影は「甦える大地」の金宇満司がそれぞれ担当。
1971年製作/89分/日本
原題または英題:Law of the Outlaw
配給:松竹
劇場公開日:1971年9月15日
ストーリー
武井吾郎は湘南海岸の近くにある花屋兼喫茶店「マントン」で働いていた。ある日、ヨット・ハーバーへ花を届けた吾郎は、睡眠薬を飲んで自殺を計ろうとする娘宮本杏子を助けた。「人命救助の美談」と追いかける新聞記者をさけ、逃げるように帰ってきた吾郎は、店の若い娘が渡したという自分の写真が夕刊に載ったのを見て顔色を変えた。数日後、杏子の屋敷に注文の花を届けた吾郎は、今日、杏子の父の泰三が決めた婚約者中沢との婚約発表会であることを知る。その杏子はいらいらして、自分が助けられたことを吾郎に喰ってかかった。とり合わずに帰った吾郎の店に、しばらくして杏子が現われたが、店先で愚連隊風の男達数人が杏子をオートバイに乗せて連れ去り暴行しようとするところを、吾郎は救い、官本邸に送った。杏子は、自分の部屋で吾郎の傷の手当てをしながら、過去、学生運動に身を投じていた頃の深い挫折感、以来、父が政治的に決めた婚約者に対してはもちろん、あらゆることに興味を失ったことなどを告白した。その夜二人は結ばれた。これを知った泰三と中沢は、杏子を精神病院に入院させてしまった。一方、日本最大の暴力組織である神竜会の大幹部大和田は、密告によって吾郎の居所を知ると、吾郎と最も親しかった殺し屋三杉を送った。吾郎は、元神竜会の幹部だったが、会長の愛人と愛し合ったため、大和田が女を撃ち殺し、吾郎は大和田の片足を傷つけて刑務所入りして、出所後、一年前から「マントン」に身をひそめていたのだった。吾郎の前に現われた三杉は、見逃してくれた。そして「マントン」のマダム里香も、吾郎に金を渡した上、杏子と二人で香港へ逃げる手筈をととのえてくれるという。中沢をしめ上げて杏子を救った吾郎は、船の出る横浜にかくれた。一方、大和田は一千万円で杏子を連れ戻すからと宮本と取り引きした上で、網の目の様に手を廻して二人を追った。そして、遂に隠れ家にも大和田の手が延び、杏子と、居合わせた里香を逃がした吾郎は捕えられた。吾郎の身を案じた杏子は、泰三に電話し、自分の身と引変えに吾郎を助けて欲しいと懇願、泰三は娘のために大和田から、金で吾郎の命を買おうとした。そして、杏子が姿を現せば吾郎の命を助ける約束が成立した。しかし、里香と杏子が姿を現した公園で、大和田は「やくざの掟だ」と吾郎めがけてピストルを連射し、吾郎を救おうとした三杉をも射殺してしまった。杏子は吾郎の傍に駈け寄って号泣した。静かに去って行く里香の頬にも一すじの涙がつたわっていた。