「神速の居合い⋯勝新太郎の当たり役!」座頭市物語 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
神速の居合い⋯勝新太郎の当たり役!
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Amazon Prime Videoで鑑賞。
原作は未読。
勝新太郎の当たり役と云えば、座頭市。その原点である本作を初鑑賞した。まず感じたのは役作りが凝っていると云うこと。座頭市の性格や動きはこの時点ですでに完成されていたのかと驚嘆した。
仕込み杖から繰り出される居合い斬りは電光石火の速技で市の実力がどれほどのものか、盲目だからとナメていた連中を一瞬で黙らせる威力である。
普段の仕草からは想像もつかない剣の使い手である、と云うギャップに心底シビレた。これが座頭市なのか、と⋯。勝新太郎にしか出せない魅力だ。
平手造酒との運命的な出会いと友情。敵対する組織の用心棒同士とは云え、互いの実力と人間性を認め合っていたふたりの宿命の対決が悲しい。
平手造酒は肺を患い、その命は風前の灯。死を前に現れた好敵手との死闘を望んだ心は、剣に生きる者の悲しいさだめだったのかもしれない。
そんな造酒の想いを汲んで決闘を受け入れた市の心のなんと美しいことかと思う。心が美しいから、己をやくざな人間だと理解した上で、極悪な親分の所業に怒り、鋭い啖呵を切ることも出来る。渡世稼業に身を置きながら任侠道のなんたるかを忘れず、筋を違えぬ生き様に憧憬の念を抱いた。
[余談]
三隅研次監督の優れた演出もさることながら、本作を格調高いものにしているのは伊福部昭の音楽の力も大きいのではないかなと思う。特撮作品の劇伴とはまた違った、伊福部音楽の荘厳な部分を感じ、新鮮な気持ちで聴くことが出来た。
*修正(2025/11/30)
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