殺人狂時代のレビュー・感想・評価
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主人公が“全然信用できない”という面白み! 殺し屋たちの濃ゆい造形も◎
とある病院では、精神病患者を殺人狂に仕立て上げようとしていた。その目的とは、人口調節のために“不要”と判断した人間を抹殺する秘密組織「大日本人口調節審議会」の活動を円滑に進めるため。ボスのもとにやって来たのは、ナチスからの使者。組織にある仕事を依頼するべく、電話帳から無作為に選んだ「3人の殺害」というテストを実施する……。こんな冒頭から始まる本作、テンポ感の良さもありますが、いやはや全く飽きない!メチャクチャ面白いです。
注目ポイントを2つあげましょう。1つ目は「大日本人口調節審議会」に所属する殺し屋たちの“個性”。「ジョン・ウィック」シリーズが好きな方には、是非鑑賞してほしいです。例えば「首筋を瞬時に切り裂くトランプ使い」「仕込み傘を携帯した老人」「義眼=暗器のマダム」「スピリチュアルで“殺す”女」「松葉杖を凶器にする男」などなど。どうです? ユニークな方々ばかりでしょ? 彼らが大活躍するのかと思えば、案外間が抜けている…でも、そこもクスリと笑える魅力!
2つ目は、信用することができない“主人公”。犯罪心理学の大学講師・桔梗信治(仲代達矢)は瓶底メガネに髭面、極度のマザコン、水虫持ち、ぬぼっとした語り口。素晴らしく冴えない中年男です(途中から小ざっぱりしますが、その変貌ぶりもイカしてます)。「3人の殺害」テストの1人に選ばれしまい、彼のもとへ殺し屋がやってくるのですが…。この導入が面白いんです。
殺し屋は「大日本人口調節審議会」に所属しているわけですから、元々狂人です。しかし、桔梗はそれを上回るほどの狂人であり変人。桔梗の言葉も、感情も、行動も、最初から全く信用ならないわけです。主人公に対する“共感”をひょいとかわし、殺し屋の襲撃をひらりと避けていく桔梗。この“信用ならない”という要素は、桔梗を魅力的な人物にするだけでなく“伏線”にまでなっているんです。旅のお供ともなる車泥棒の大友ビルは“第四の壁”を越えて、こんなことを言います。「あのー、これは一体どういうことになっちゃ……(ったの)?」。本当に、最後の最後まで“信用ならない”!
余談:「大日本人口調節審議会」のボス・溝呂木省吾を演じるのは、天本英世。その怪演も見応えたっぷり!
仲代さんのルパン3世?
【殺人狂時代】(1967) 岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その6
仲代達矢さんがこんなにもすっとぼけて軽やかな役を演じておられるのを初めて観ました。そして、その背景を読み解き、本作からルパン3世へと繋がる道筋を検証する上映後のトークがすこぶる面白かったです。岡本監督がモンキー・パンチの作品の原作者を務めた事があったなんて全く知りませんでした。そして、冷遇された時代の岡本監督の背景考察も凄く刺激的。
月イチの本シリーズは、毎回トークショーが充実しているのですが、今回は特に予定時間を超えて(でも、もっと聞きたかった)の盛り沢山なお話でした。来月は愈々8月、『肉弾』と『日本のいちばん長い日』の毛色が正反対の戦争大作連続上映です。
光と影
ストーリー:秘密結社は殺人作戦を決行するが、作戦をすり抜けたターゲットがいたもんだから、秘密結社はその男を殺そうと必死になる。
殺し損ねた男を罠にはめようとあの手この手を繰り出すところが面白いといえば面白い。
画像として光と影の演出が素晴らしい。また正面のアングルにこだわってる感があって、そこも面白い。
そういう面白い点も多少ある。
しかし、令和に到達した今、漫才やコントに慣れた現代の鍛え抜かれた目から見ると基本的にまどろっこしくて退屈。そして意外とシュールさが足りない。当時としては頑張った方なのだろうが。
殺人劇の中にコメディをまぶしたつもりかもしれないが、正直全然お笑いになっていないのでコメディは邪魔にすら感じる。
今週の気付いた事:もっと破壊して欲しかった。
面白いからみんな見よう
かなりぶっ飛んでる内容だけど、軽妙な物語運びで90分位なのにしっかりと満足出来る。
今、リメイクしても結構面白く作れそう。
あとケミストリーのサングラスの先駆けが見れる貴重な作品。
色んな意味で面白い。
だましだまされあいつがルパンだばかもん
大変楽しく観賞。
エネルギー溢れるドタバタ殺人コメディ。
ボロボロのシトロエンの車、次々と現れる刺客、実は最強オタク青年。
日本の後の作品、特にアニメに与えた影響をもう至るところに感じる作品でした。
主人公の名前がシンジってのもまた、ね。
日本映画で最も007シリーズに近い映画です
これは怪作!そして快作!
チャップリンの同名映画が遥に有名だが、同名異作で全く内容は関係はありません
主演の仲代達矢もこんなカッコいいヒーロー役観たことありません
天本英世も素晴らしい怪演です
彼のファンならマストの作品です
日本で007シリーズをもし撮ったとしたら、気恥ずかしい陳腐なものしか想像できませんが、本作を観たならやれたかも知れないと思わせます
日本映画で最も007シリーズに近い映画だと思います
岡本喜八監督凄いです!
税金のくだり笑った
1967年岡本喜八監督作。主演仲代達矢。
噂に聞いてたがこれは凄い。すっとぼけたユーモアとラディカルな編集など要所でコミカルな映画を装っているが、実態は岡本喜八の(毒)の部分を濃縮還元したような内容。ジャンルを超越したような趣きもある。ブラックジョーク・不条理コメディ・どんでん返しサスペンス・ハードボイルド、全て詰まってる。
なんと言っても仲代達矢の正体不明さを最大限に活かした主人公のキャラが素晴らしい。ちょっと何を考えてるのかわからない顔なんだよね仲代達矢。対する天本英世の怪演(というかいつもこんな感じだけど)も良い。団令子の色っぽさも実にいい。
岡本喜八だけに戦争の影もあり、ヒトラー演説を被せてくるシーンなども。色んな意味で濃い一作です。必見。
個性派揃いの殺し屋達。 それを束ねる怪しすぎるほどの天本英世。 冴...
個性派揃いの殺し屋達。
それを束ねる怪しすぎるほどの天本英世。
冴えない大学講師の仲代達矢。
セクシー満点な団令子。
今どきなPVを観ているような、テンポの良い編集と映像美。
こんな無国籍映画って今にある⁈
とにかくかっこいい!
日本映画の隠れた宝
こんな時代にこんな過激で狂った映画があったのか!いや、こんな時代だったからこそおもしろい映画が出来たんだ!
今の日本映画は、岡本喜八を見習うべき。
仲代達矢かっこいい!
次から次へと登場する殺し屋もかっこいい!
すべてがかっこよすぎる!
いつの時代も、ブッ飛んでる奴はいるもんです!
岡本喜八監督の1967年度作品。
同監督の『大誘拐』が面白かった記憶があったんで、レンタル店でなんとなぁく借りたのだが……大当たり!
いやいやいや、モノクロの頃の日本映画でこんなにクールでトチ狂った映画があったとは!
凶悪なパラノイアを抱える人間を暗殺者に育てるマッドサイエンティスト・溝呂木博士の元を、『人口調節審議会』なる謎の組織の男(元ナチ軍人)が訪れる。
優秀な暗殺者を育て上げる博士を是非とも組織の一員にしたい。だがその為に、まずこちらが指定した3人の“不要な人間”を暗殺者達に始末させ、実力を証明してほしい、と。
話に乗った博士は早速“仕事”に掛かり、瞬く間に2人の暗殺に成功。
最後の1人も時間の問題かに思えたが……
この最後の男・桔梗がクセモノだった!!
大学講師だというこの男、髪も髭もボサボサでビン底眼鏡で水虫持ちでマザコンのどうしようもなくトボけたオッサンなのに、これが全然死んでくれない。それどころか送り込んだ暗殺者が、偶然だか何だか分からない手口でどんどん返り討ちに遭っていく始末。
桔梗はなりゆきで仲間になった記者・鶴巻啓子(団令子がキュート)と「車の運転なら任せろ」とのたまうチンピラ・大友ビル(オートモビル……)と共に逃亡劇を繰り広げる。実は、彼がターゲットに選ばれたのにも重大な秘密が……。
トランプで喉笛を切り裂く男!
殺人義眼を持つ女!
仕込み杖の老人!
次々に送り込まれる危険でヘンな殺し屋13人が楽しい。
桔梗を演じる仲代達矢も最初こそ胡散臭さ満点だが、暗殺者から隠れる為に身なりを整えるとこれがまたカッコいい。
しかしこの映画で一番素敵なのは、溝呂木博士を演じる天本英世!!(仮面ライダーの死神博士ね)
「君、人間にとって最大の快楽というのはね、殺人ですよ」
「私は力では君に勝てない。どうかね、スペイン式決闘で決着をつけようじゃないか」
などと不敵な笑みを浮かべて言い放つ姿は悶絶するほどクール。独自の美学を持ったエレガントな悪党ぶりは必見!
とまぁ、ブッ飛んだ映画です。ブッ飛びすぎて物語の展開やギャグまで飛躍してる部分もあるが、それは御愛嬌(笑)。終盤ちょっとしんみりしてしまう点は残念だけどね。
スコア4.0判定には『昔の映画なのに』という驚きも含まれているかもだが、それを差っ引いても今の下手なエンタメ邦画より活きが良くって面白い!
未見の方は是非是非。
<2010/11/9鑑賞>
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