劇場公開日 1967年2月4日

「いつの時代も、ブッ飛んでる奴はいるもんです!」殺人狂時代 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いつの時代も、ブッ飛んでる奴はいるもんです!

2010年11月28日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

岡本喜八監督の1967年度作品。
同監督の『大誘拐』が面白かった記憶があったんで、レンタル店でなんとなぁく借りたのだが……大当たり!
いやいやいや、モノクロの頃の日本映画でこんなにクールでトチ狂った映画があったとは!

凶悪なパラノイアを抱える人間を暗殺者に育てるマッドサイエンティスト・溝呂木博士の元を、『人口調節審議会』なる謎の組織の男(元ナチ軍人)が訪れる。
優秀な暗殺者を育て上げる博士を是非とも組織の一員にしたい。だがその為に、まずこちらが指定した3人の“不要な人間”を暗殺者達に始末させ、実力を証明してほしい、と。
話に乗った博士は早速“仕事”に掛かり、瞬く間に2人の暗殺に成功。
最後の1人も時間の問題かに思えたが……

この最後の男・桔梗がクセモノだった!!
大学講師だというこの男、髪も髭もボサボサでビン底眼鏡で水虫持ちでマザコンのどうしようもなくトボけたオッサンなのに、これが全然死んでくれない。それどころか送り込んだ暗殺者が、偶然だか何だか分からない手口でどんどん返り討ちに遭っていく始末。
桔梗はなりゆきで仲間になった記者・鶴巻啓子(団令子がキュート)と「車の運転なら任せろ」とのたまうチンピラ・大友ビル(オートモビル……)と共に逃亡劇を繰り広げる。実は、彼がターゲットに選ばれたのにも重大な秘密が……。

トランプで喉笛を切り裂く男!
殺人義眼を持つ女!
仕込み杖の老人!
次々に送り込まれる危険でヘンな殺し屋13人が楽しい。
桔梗を演じる仲代達矢も最初こそ胡散臭さ満点だが、暗殺者から隠れる為に身なりを整えるとこれがまたカッコいい。
しかしこの映画で一番素敵なのは、溝呂木博士を演じる天本英世!!(仮面ライダーの死神博士ね)
「君、人間にとって最大の快楽というのはね、殺人ですよ」
「私は力では君に勝てない。どうかね、スペイン式決闘で決着をつけようじゃないか」
などと不敵な笑みを浮かべて言い放つ姿は悶絶するほどクール。独自の美学を持ったエレガントな悪党ぶりは必見!

とまぁ、ブッ飛んだ映画です。ブッ飛びすぎて物語の展開やギャグまで飛躍してる部分もあるが、それは御愛嬌(笑)。終盤ちょっとしんみりしてしまう点は残念だけどね。

スコア4.0判定には『昔の映画なのに』という驚きも含まれているかもだが、それを差っ引いても今の下手なエンタメ邦画より活きが良くって面白い!
未見の方は是非是非。

<2010/11/9鑑賞>

浮遊きびなご