「田中絹代の演技と美しさに圧倒された」西鶴一代女 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
田中絹代の演技と美しさに圧倒された
田中絹代というと小柄でかわいい、というイメージが強かったのですがこの映画の彼女の堂々とした演技に感動しました。当時40代前半の彼女が10代から50代までを演じています。娘時代の彼女に違和感もなく、その時々の年齢、身分、立場、心持ちに応じた化粧、髪、着物、着付け、歩き方、話し方と声が変わらずお春になっていて見惚れました。夜鷹の田中絹代は凄みがありました。
あまりにアップダウンが激しい人生なので、今、この芝居をやったらついていけないか、笑ってしまうようなものになると思う。でも田中絹代の演技がそれをさせなかった。たまたま美しく生まれ、正直で芯がありつつ柔軟で優しい性分だっただけで辛い思いをせざるを得なかった理不尽が充分に伝わった。生き抜くしたたかさもあって、白馬の王子も機械仕掛けの神様も居そうで居なかったのがリアルだった。
出演者は絢爛豪華、それぞれの個性が生きていて笑える箇所もあって楽しかった。沢村貞子が上方の奥さんなんてなかなか見ることできないと思ったし、髪のくだりは可哀想ながら笑えた。沢村貞子の弟の加東大介も出ていたなあ。上方がメインの舞台だけあって浄瑠璃や太棹三味線の音色がお春の人生の伴走になっていた。江戸の城で、桐竹紋十郎が一人遣いであっても人形を遣う場面があって嬉しかった。演目は朝顔日記かなあ?(よくわからなかった)一目で恋に落ちた恋人同士の話で、深雪が盲目になったこともあってすれ違い、或いはわかっていても名乗れない状態。でもお嬢様の深雪は強い、髪振り乱して泳いで川を渡る!もともとお嬢様のお春も強い。どん底になっても逞しく与えられた環境で生きていく。田中絹代自身も。
talismanさんへ
たくさんの「♥共感」と「コメント」を頂き、大変恐縮いたしております。
ここのところ、溝口映画をまとめて鑑賞いたしておりますが、切っ掛けは小津映画を通じての皆様のレビューでした。
そんな意味で鑑賞指針となるこの“映画.com”は私にとっては大切な場所です。
今後とも“映像.com”でのお付き合いの程、宜しくお願いいたします。