劇場公開日 1995年9月23日

「テーマはやはりバブル崩壊がもたらした精神の荒廃であったのだと思います」GONIN あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5テーマはやはりバブル崩壊がもたらした精神の荒廃であったのだと思います

2020年4月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

GONIN とは、組事務所を襲撃する五人のこと
なぜローマ字表記であるのか?
その五人には連帯なぞなくバラバラの集まりを示しているのだと思います
人数と同じ五文字です

赤いはらわたシリーズとは独立した物語です
名美も哲郎も登場しません
圧倒的な暴力の表現、冷めた視線の撮影
その表現に隠れていますが、テーマはやはりバブル崩壊がもたらした精神の荒廃であったのだと思います

ホモセクシャルがなぜ中核に据えられているのかもそれに関係しているのだと思います

万代と三屋、京谷と柴田に物語は収斂されます
ジミー、氷頭、萩原は恋人や家族とのノンケの人間であり、次々に退場していくのです

つまりノーマルな関係性は崩壊してしまい、維持しようにも再建しようにももはやどうしょうもなく壊れていくのです

残されるのはノーマルで無いところの関係性だけだったのです
しかも暴力に彩られた形なのです

結局、三屋と京谷が最後まで生き残り、死んでもなお高速バスでともに旅行するのです
果てしのない地獄までいくのです
それがバブル崩壊、失われた20年をも予言しているのです

公開された1995年の空気感が本作に凝縮して閉じ込められています

その年は、阪神大震災で幕をあけ、オウム真理教のサリン事件と続き、金融機関の不良債権問題が渦巻く世情が騒然と浮き足立っていました
バブル崩壊は単なる不況や地価の下落ではなく、底知れぬ奈落への墜落ではないのか
それを誰しもが感じ始めた年だったのです
それは生き残る為なら、何でも有りという考え方に普通の人間までも囚われるようになっていく始まりだったのです

単なるバイオレンスアクションに止まらない映画であり、それが今日も見る意義と意味を失わせていないのだと思います

あき240