子連れ狼 死に風に向う乳母車のレビュー・感想・評価
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圧倒的映像美。
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大ヒット劇画の映画化第三弾。
監督三隅研次、撮影牧浦地志の顔ぶれは前二作と同じ。
劇画(コミック)原作の映像化に戸惑いがあったのか、前二作は全体的に浮わついた印象で、くだけた言い方をすればマンガチック。
大映時代劇独特の色彩美もニ作目では影を潜めていたのでシリーズもこのまま尻すぼみかと思いきや、いい意味で予想を裏切る出来映え。カメラワークも演出も類をみないほど際立っている。
二段構えのクライマックス、特に加藤剛演ずる官兵衛と拝一刀との一騎討ちは『椿三十郎』(1962)のラストシーンに匹敵する名場面。
主君を護るために命懸けで討って出たのに、役目怠慢で藩を逐われ渡り徒士に身を堕とした官兵衛の立場に共鳴するものがあったのだろうか。
大地に転がり天を睨み付ける官兵衛の首のシーンを作り物で安っぽく仕上げなかったことに、旧大映スタッフの意地と矜持が感じとれる。
この作品、加藤以外にも、浜木綿子、山形勲、浜村純、中谷一郎と脇を固める共演陣が前二作に比べとにかく豪華。作品をいっそう引き締めてくれている。
ケチの付けようのない映画だが、銃器の時代考証だけは適当。
草野大悟演じる朽木らが持つニューモデルアーミーぽいリボルバーも機関銃も、実際に登場するのは19世紀になってから。江戸時代初期に箱車があったら、世界制服だってできちゃいそう。
原作に則った演出なんだろうけど、原作者、絶対『続・荒野の用心棒』(1966)見てるな。
スプラッターやカルトムービーなどと侮ってはいけない、映像遺産に指定したい名作映画。映像美という賞賛こそ本作には相応しい。
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