劇場公開日 1992年12月12日

「なかなか志の高い怪獣映画ですが、昭和のモスラ映画とあまり変わり映えしないというのが正直なところ」ゴジラVSモスラ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5なかなか志の高い怪獣映画ですが、昭和のモスラ映画とあまり変わり映えしないというのが正直なところ

2022年5月13日
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鑑賞方法:VOD

1992 年12月公開
監督は大河原孝夫に交代
大河原孝夫は東宝の社員で生え抜き
1984年のゴジラの助監督をしていた人
力をつけてきたからでしょうか
前作まで2作続いて監督だった大森一樹は脚本のみです
外様は辛いもんです

1992年は、景気が後退を始めたと公式に政府が認めた年です
とはいえまだまだバブルの余熱は高いままでした
お立ち台とジュリアナ扇で有名な竹芝海岸のディスコ「ジュリアナ東京」のオープンは1991年5月、1992年の頃は絶好調の頃でした
行かなかったけど誘われたことがありました(今となれば行っとけばよかったなあ・・・遠い目)

前作までは、バブル崩壊への恐怖の形をゴジラが代弁していました
では本作ではゴジラは何の恐怖の形を代弁したのでしょうか?

それは環境破壊でしょう

1992年6月にリオデジャネイロで「地球サミット」が開催されています
恐らくこれが企画の発想の出発点でしょう

正式名称は「環境と開発に関する国際連合会議」
国連の主催でほぼすべての国連加盟国の世界172か国の代表や産業団体、市民団体などのNGOの代表約2400人延べ4万人以上が集まった国連史上最大規模の国際会議です
環境問題に対して世界的に大変大きなインパクトを与え、のちの京都議定書やパリ協定、SDGsに続いていったのです

地球規模で環境と開発を調整する持続可能な開発の概念が広く一般的になっていくきっかけになったのです

そういえば6月は環境月間だそうで、あちこちで環境への取り組みポスターを見かけます
今からきっかり30年前のことだったのです

環境となれば、怪獣界の担当は昔からモスラと決まっています

地球環境を破壊する警告としてゴジラが登場するわけです

冒頭の巨大隕石は一体なんだったのでしょう?
深海で眠るゴジラを起こすだけではなく、地球サミットの衝撃を受けて、人類が環境に目覚めるのだという暗喩だったと今なら分かるようになりました

物語は正に地球規模で環境と開発を調整しようというものでした

インディージョーンズ風味が序盤から全編に渡って散りばめられています
単にやりたかっただけでなく、熱帯雨林の環境保全を映像で見せようという意欲なのだと思います

バトラによる名古屋の破壊
1964年のモスラ対ゴジラでゴジラが襲撃したから名古屋が選ばれたのでしょう
もしかしたら、名古屋はトヨタのお膝元でバブル崩壊の局面の中でも、特に景気が良かったからでもあったかも知れません
このころは突出していて「名古屋嬢」なんて言葉ができたぐらいです

モスラが国会議事堂に繭を作り羽化します
1961年のモスラでは東京タワーでした
もともとは国会議事堂が原案だったそうで、その復活です
政治の中心地でなんらかの巨大なトランスフォーメーションが起きるという映像は、1960年安保の大騒乱を経た直後には刺激的過ぎるとの判断で東京タワーに変更されたのだと思います
ならば1992年にその映像を復活させる意図は何なのでしょう?
環境への政治の取り組み不足?
それもあるでしょう
それよりも当時の宮沢内閣が、1992年8月金融機関への公的資金の導入」に言及していますが反対されて流れています
つまりバブル崩壊に対して、政治が抜本的に変わらないと本当に崩壊する!という危機感がそうさせたのだと思います

富士山噴火は1973年の「日本沈没」以来の特撮です
本作は大ヒットして、日本沈没の持つ配収記録を19年ぶりに更新したそうです

ワンダーエッグという遊園地は二子玉川にかってあった遊園地
今の二子玉川ライズのあるところですね

みなとみらい
パシフィコ横浜、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル開業は1991年8月
できたてのところを怪獣が襲撃するのは当然のことです
ランドマークタワーの竣工は1993年なのでまだ建設中
それが倒壊させるのだから痛快です

不満は小美人の双子です
東宝シンデレラコンテストのグランプリと審査員特別賞の二人なのですから、とても美人です
歌もまあまあです
東宝主催のコンテストなのですから映画出演もお約束で当然のことです
でもやはり、1961年のモスラがザ・ピーナッツなら、1992年の本作は当時人気絶頂のwink を起用すべきであったと残念でなりません

小林聡美は俳優として良い仕事をしています
女性を大事にする怪獣映画なら彼女で正解です
でも主人公がつりあわず逆に可哀想でした

終盤の決戦は正に「極彩色の大決戦」でした
平成ゴジラシリーズでは最高の観客動員数だったそうです

なかなか志の高い怪獣映画ですが、昭和のモスラ映画とあまり変わり映えしないというのが正直なところ

次回作のゴジラ対メカゴジラは燃えます!

あき240