「1954年のゴジラを本当にリブートして、さらに30年後まで続く永遠のコンテンツにしたのは1984年版と本作です 特に本作の功績は巨大なもので有ったのです」ゴジラVSビオランテ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
1954年のゴジラを本当にリブートして、さらに30年後まで続く永遠のコンテンツにしたのは1984年版と本作です 特に本作の功績は巨大なもので有ったのです
1989年12月公開
平成は同年1月8日から始まりました
つまり文字通り平成ゴジラシリーズは本作から始まりました
前作の1984年版のゴジラは30周年記念として製作されましたが、まだ昔のゴジラシリーズの残滓を色濃く残していました
しかし、本作は全く新しいシリーズに一新されたと納得出来る内容になりました
超ひさびさに観て色々と新たに感じる事がありました
ゴジラという存在は、やはりなんらかの大きな不安の暗喩であるということ
1984年版にはそれが欠如していたのです
一応、核戦争の恐怖で製作されていますが、日常生活を一皮むいた下にある切実な不安では、なかったのです
では本作品は何の不安であったのでしょうか?
今なら良く分かります
それはバブル景気への漠然とした不安です
本作公開の1989年はバブルのピークに突入しようという時です
「24時間働けますか?」なんてCM が流行語に、なったのはこの年です
こんな空前の繁栄はいつまでつづくのか?
高く登れば登るほど、落ちる高さは高くなりだんだんと怖くなってくるのです
次作の「ゴジラvsキングギドラ」は1991年の正にバブルのピークに公開され、以降バブル崩壊局面の中、次々にシリーズが公開されて行ったのです
だからバブル崩壊が誰の目にも明らかになった1995年に平成ゴジラシリーズは打ち止めとなったのです
もはやゴジラは日常生活にあって、破壊をしていたのですから、もう映画で観たい存在ではなくなってしまったのです
本作は商都大阪のビジネスの中心部をゴジラが破壊する
まさにバブルを破壊しにゴジラは来るのです
水面下の漠然とした不安を暗喩しているのです
適当なミニチュアセットではなく、きちんと実際の街並みをミニチュアセットで再現してあります
それを破壊し燃やす
バブルが最高潮に向かおうという時に、目もくらむほどに繁栄しているシンボルとして超高層ビルが登場して破壊されるのです
特技監督は川北紘一
円谷英二、中野昭慶に連なる正統なる後継者です
その人が思う存分に、見知った街並みを破壊してくれるのです
劇中で、我々の時代は終わったという台詞があります
それを言う白神博士役の高橋幸治は公開時54歳、特技監督の川北紘一は47歳
黒木三等特佐役の高嶋政伸23歳
本作とは関係は有りませんが、庵野秀明は29歳
樋口真嗣は24歳でした
特撮の世代交代がもう直ぐあると予告しています
多用されるワイヤーフレームのコンピューターグラフィクスは、特撮の今日の在り方を予言しています
若狭湾での決戦で一列に多数の戦車が並ぶ構図は、もちろんエヴァンゲリオンの第一話に引用されたあれです
続く原発からの電源供給の光景も、エヴァンゲリオンのヤシマ作戦の元ネタになったものです
そして改めて思うのは、ゴジラという侵略者への自衛戦闘の映画であり、自衛隊が大災害に対処する映画でもあったのです
防衛庁(当時)の全面協力で実際の戦車やヘリや部隊が、伊福部昭の軽快な音楽で展開されるワクワク感は大変に優れています
また30年後の近未来の戦いを見事に予言しているのです
スーパーX2 は、ウクライナ戦争の最中の私たちには、ドローンそのものに見えます
シン・ゴジラに米軍のドローン攻撃機が登場するのはこれに由来していたのかも知れません
ゴジラの熱線に撃墜されるヘリは、ウクライナのミサイルで撃墜される光景に重なります
抗核エネルギーバクテリアを仕込んだ肩打ちミサイルはジャベリンを連想するものです
口にも撃ち込まれる抗核エネルギーバクテリアはシン・ゴジラで血液凝固促進剤の経口投与の元ネタでしょう
シン・ゴジラにまで続く、ゴジラ細胞の設定は本作から始まったものです
ゴジラの皮膚に撃ち込まれるミサイルは、シン・ゴジラではステルス爆撃機から投下されるバンカーバスターになっていました
そのように考えれば、シン・ゴジラが形態を変えていくのはビオランテから来ているのだと思えて来ます
このようにシン・ゴジラは本作からかなり由来していたのだと気付かされました
1954年のゴジラを本当にリブートして、さらに30年後まで続く永遠のコンテンツにしたのは1984年版と本作です
特に本作の功績は巨大なもので有ったのです